シティ・オブ・ゴッド【廉価版2500円】 [DVD]シティ・オブ・ゴッド【廉価版2500円】 [DVD]
◆プチレビュー◆
時代と共に変わる音楽が効果的。出演俳優は実際にスラムに住む住人から募集し、子供達にテーマを与え即興で台詞を作っていくワークショップで製作されたのも興味深いことだ。イジメや動機なき犯罪などとは全く違う次元の世界に、圧倒される。

少年プスカペは“神の街”と呼ばれるリオのスラムに住んでいるが、いつか写真家になってこの街を出ることを夢見ている。60年代後半にモーテル襲撃事件を起こしたチンピラたちに取って代わって、リトル・ゼとベネの2人が一夜にして街を手中に収めたのが70年代。それは、堅気も子供も巻き込んだ、対抗勢力との仁義なき抗争の始まりだった…。

暴力、麻薬、殺人。極めて社会性の強い題材で、深刻かつ説教臭くなりそうなところを、スタイリッシュな映像でスピーディに活写する。神の街の少年たちの相当にヤバい現実は、同時にポップな日々なのだ。カーニバルとサッカーの国ブラジルの別の顔がここにある。逃げる鶏と追う子供、銃を片手にズラリと並ぶ悪党たちと向かいあうハメになるプスカペ。迫力のオープニングで一気に物語に引き込まれた。ドリブルで抜くか、一旦ボールを下げるか。かくして、陽気で残酷な試合の幕が開く。

立ち上がりはまだのどかな60年代。激しいプレーも時折見られるものの、神の街はなんとか均衡を保っていた。しかし、小競り合いのはずのモーテル襲撃事件が、多数の死者を出す歴史に残る惨劇となったことから、やむを得ず主力が移籍することに。70年代初め、街に舞い戻ったリトル・ゼとベネの二人のフォワードのカウンターアタックが見事に決まり、一日で街を支配下に収めると、一気に試合は動き出す。リスクの高い強盗から儲けが大きい麻薬へと戦術が変わり、銃撃戦も頻繁に。観客席にいるプスカペが、初めてカメラと写真の魅力を知った頃に前半終了の笛が鳴った。

審判の警察とも癒着する神の街ではクリーンな試合運びは難しい。幼い子供たちも、流血のプレーを見ながら育つせいか当たり前のように銃を手にし、いつでも試合に出られるようにベンチでひしめく有様だ。プスカペの淡い恋は、あっさりとラインを割るが、ハーフタイムは70年代半ばで、世界はラブ&ピースの時代。殺人が快感のリトル・ゼと違い、根は善人のベネがおしゃれや恋に目覚め、さっさと引退を決意。しかし、そこに一発の銃声が鳴り響き、無情にも後半戦に突入することになる。

70年代末、後半は開始早々、ラフプレーの応酬だ。家族を殺され、彼女をレイプされた堅気のマネが、相手チームに加わりいよいよ試合は佳境に。血で血を洗う激しいタックルの連続だが、交代で入ってきた選手ガキ軍団の思いがけないフェイントで試合は予想を越えた展開になる。新人のデビューはいつでもファンを驚かせるが、この天王山の試合を終わらせる力はない。延長戦か?再試合か?混迷し、更なる治安の悪化を招いた抗争で、シティ・オブ・ゴッドの凶暴な試合は今もまだ続いている。

プスカペの回想のモノローグで進む物語は、リズムとストップモーションを対比させた演出が魅力的だ。鮮やかな場面展開と斬新な映像は、個人技に優れた南米特有の自由なスタイル。底辺の暮しから抜け出して大スターが生まれるように、プスカペも今は、新聞社に出した決定的なスルーパスが通ったおかげで、写真家として成功している。スラムの終わらない凶行は悲劇だが、当事者の彼らにとって、暴力という非日常は、連綿と続く日常としてあっけらかんと流れ去るに過ぎないのだ。不敵で陽気な笑顔は極限状態を駆け抜けるパワーか。2時間10分の試合の中で次々に繰り出されるシュートは、平和ボケした頭には少々キツいかもしれない。

□2002年 ブラジル映画  ポルトガル語原題「CIDADE DE DEUS」
□監督:フェルナンド・メイレレス
□出演:アレシャンドレ・ロドリゲス、レアンドロ・フェルミノ・ダ・オラ、セウ・ジョルジ、他

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