フリーダ DTS特別版 [DVD]フリーダ DTS特別版 [DVD]
◆プチレビュー◆
企画段階で、ジェニファー・ロペスと争ったことが話題になったが、やっぱりメキシコ人女優のハエックで大正解だ。 84年製作のポール・リデュク監督のメキシコ映画「フリーダ・カーロ」と見比べて見るのもおもしろい。

1907年にメキシコに生まれたフリーダは、18歳の時に遭った事故で瀕死の重傷を負うが、奇跡的に一命を取り止める。ベッドに拘束されている間に出会った絵画に生きる情熱を注ぎ込むようになるフリーダ。やがて歩けるようになった彼女は、高名な壁画家ディエゴ・リベラと愛し合うが、それは喜びと苦痛を伴う日々の連続だった…。

続き眉と薄い口髭で知られるメキシコ人女流画家の生涯は激しすぎる。彼女の描く絵画は、グロテスクでシュールだが、何とも魅力的で、そのパワーの源となったのが自身の壮絶な生き様だ。不実の夫、流産、事故の後遺症。それら全てを創作活動の糧とする。メキシコ人女優サルマ・ハエックが8年間構想を練り、情熱を注ぎ込んで完成させたもので、波乱に満ちた47年の人生は、短いが強い輝きを放っている。

大恋愛の末に結ばれた夫ディエゴの際限ない浮気に悩まされるが、フリーダ自身も奔放な恋愛を重ねる。革命家トロツキーや劇中には登場しないが、彫刻家のイサム・ノグチなどのセレブと浮名を流し、時には男装するフリーダは、同性との恋愛にも積極的。自由なセクシュアリティーの持ち主だったのだ。生涯に渡り30回以上の手術を受け、肉体的に満身創痍の彼女は、せめて精神的に自由であろうとしたのだろうか。

祖国メキシコの民族的要素にも誇りを持ち、NYやパリという20世紀前半の最先端のファッションの地へ赴いても、カラフルなメキシコ独特の装いとアクセサリーを身にまとった。劇中に出てくるインテリアも、彼女の描く絵のように色彩豊かだ。

舞台「ライオン・キング」の演出家として知られるジュリー・テイモアが監督していることが、この映画に更なる個性をもたらした。大胆な解釈や奇抜なアイデアが、フリーダの絵画のシュールな作風とマッチし、奔放な映像となって観客を魅了する。病院でのパペット・アニメ、NYへの旅のコラージュ、CGを使った絵から実写への変化など、けれん味たっぷりでさすがの演出だ。特に、バスの大事故のシーンは、腰に鉄棒が突き刺さり、鎖骨や骨盤が砕け右足を潰す凄惨な場面だが、この残酷な情景に金粉を散らせ、悪夢のような出来事を極めて装飾的な場面として表現。斬新な舞台演出を得意とするテイモア色を色濃く打ち出している。

絵画という表現手段を得たとはいえ、自らの尋常ならぬ不運を跳ね除ける生への情熱はラテンならではのもの。肉体と心の痛みを自画像へと昇華させた彼女の生涯は、逆境との闘いでドラマチックだが、映画は悲壮感よりもメキシコの風土や開放感、独自性を伝えてくれる。政治的にも一筋縄ではいかない芸術家カップルとはいえ、冷静に考えると、デブの男と毛深い女の浮気合戦。それなのに、観終わると美男美女のピュアな恋愛物語に思え、感動がこみ上げるから不思議だ。劇中に登場するテオティワカン遺跡のように、フリーダの人生と芸術は、孤高で気高いもののように思える。

□2002年 アメリカ映画  原題「Frida」
□監督:ジュリー・テイモア
□出演:サルマ・ハエック、アルフレッド・モリーナ、エドワード・ノートン、他

人気ブログランキング用バナー

←この記事が気に入ったら、ポチッとクリックしてもらえると嬉しいです\(^o^)/