ファム・ファタール [DVD]ファム・ファタール [DVD]
◆プチレビュー◆
冒頭、ヒロインがTVで見ている映画は、ビリー・ワイルダーの傑作「深夜の告白」。この作品が映画の方向を示しているが、デ・パルマの迷走ぶりがくっきり浮かぶ作品。

カンヌ映画祭の会場から高価な宝石が盗まれた。泥棒の一味の一人であるロールは、仲間を裏切って宝石を奪い、姿をくらませてアメリカへの高飛びに成功する。7年後に名前を偽って大使夫人としてパリに舞い戻るが、パパラッチのニコラスに顔写真を撮られてしまう。正体がばれることを恐れたロールは、悪女の本性を現した…。

デ・パルマがヒッチコックに傾倒しているのは、自他ともに認めるところ。ヒッチ風という形容が、やや軽蔑気味だったのが、賞賛のニュアンスに変わったのは、いつ頃からだろうか。いつのまにやらデ・パルマ風というスタイルを確立していた。画面分割や独特のカメラワーク、複雑に張り巡らせた伏線など、デ・パルマ健在なりと言わんばかりだ。国際的なキャスト・スタッフには、音楽で坂本龍一も参加している。

セレブで賑わうカンヌ映画祭。本物をドーンともってくる気前の良さだ。S.ボネール主演の仏映画「イースト・ウェスト」も登場する豪華さ。その会場で385カラット、1000万ドルのダイヤのビスチェが盗まれる。この盗みのシーンの設定はやや甘いものの、いきなりのエロティック・モードで、物語は裏切りと逃亡、そして新たな人生へと急展開。悪女は女優でなくてはならないと痛感するのはここからだ。

ファム・ファタールとは男を惑わす“運命の女”の意味。映画ではディートリッヒの「嘆きの天使」やキャスリン・ターナーの「白いドレスの女」のような悪女で、原型はメリメの小説「カルメン」だと言われている。しかし21世紀型のそれは、単に男を奈落の底へ突き落とすだけでなく、自分の運命を切り開く強さとしたたかさを持って生き抜く女。主演のレベッカはトップ・モデル出身で、監督のイメージ通りだったとか。瓜二つの人物、貞淑で上品な顔と悪女(ビッチ)の顔の二面性は、ヒッチコックの「めまい」へのオマージュが見て取れる。

ショパールをはじめとするゴージャスな宝石と、シャネルやエルメスなどの一流メゾンのコラボレーションも、美しいレベッカがあってこそ。これが「X-men」で全身うろこのボディメイクのミスティークと同一人物とは…。いつもは濃くて大仰なA.バンデラスもここではチョイ役に等しい。露出度過多で、必然性が限りなく無いクネクネダンスのストリップにあきれているうちに、あっさりと罠にハマる仕掛けなのだ。

悪女の知恵と悪運がつきたと思った瞬間に訪れる大ドンデン返しは秘密だが、ひとつだけヒントを挙げるとすれば、画面のところどころに映る時計。時間が鍵だとだけ言っておこう。このオチは、普通なら許すまじ!だが、デ・パルマならばOKだ。画面の細部にまでこだわり、ヒッチコックへの尊敬も忘れず、スタイリッシュな映像もふんだんに用意する、技巧派監督だからこそ味わえるサスペンスなのである。

□2002年 アメリカ映画  原題「Femme Fatale」
□監督:ブライアン・デ・パルマ
□出演:レベッカ・ローミン=ステイモス、アントニオ・バンデラス、ピーター・コヨーテ、他

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