座頭市 <北野武監督作品> [DVD]座頭市 <北野武監督作品> [DVD]
◆プチレビュー◆
勝新にどれだけ思い入れがあるかで評価が分かれる作品だ。海外での好評は、座頭市そのものを知らないことが吉と出たか。芸者遊びやお祭りなどの日本文化を盛り込んだサービスにも抜かりがない。ギャグは個人的にはあまりノレなかった。

ヤクザの銀蔵一家が仕切る宿場町に、3組の旅人が入る。盲目で居合い斬りの達人の座頭市。凄腕の浪人で病気の妻の薬代を稼ぐため用心棒稼業をする服部源之助、親の仇を探す旅芸者の姉妹おきぬとおせい。三者の思惑が絡み合い、やがて壮絶な闘いが繰り広げられる…。

子母沢寛の随筆集「ふところ手帖」に、ほんの数行登場する座頭市。博打好きで女好きのヤクザものだ。座頭市と言えば故勝新太郎の一世一代のあたり役で、他の俳優によってきちんとした形で演じられるのはおそらくこれが初めてだろう。イメージが固定している傑作時代劇のキャラクターに挑戦するだけでも勇気がいることだ。しかし“世界のキタノ”が打ち出したのは単なるリメイクではない。盲目で居合い斬りの達人ということ以外全てが新しく、斬新なのだ。

金髪、ギャグ、タップダンス…。こういう話題が先行すると、もしやパロディかと思ってしまうが、実は驚くほど正統派時代劇の趣が漂っている。宿場町での旅人の出会いや、剣の達人同士の一騎打ち、仇打ちの助太刀などは、時代劇の典型的スタイル。石灯篭を砕き、とっくりを斜めに切り、障子の向うの見えない敵を倒すのもお約束通りだ。おぉ、時代劇してるじゃないか!とヘンに感心させられる。今だから言うが、座頭市リメイクの噂を初めて耳にした時は、ダンスとコント満載の珍作“狸御殿”シリーズの勝新を連想して、密かに身構えていたのだ。

では、いったいどこが新しいのか。何しろたけしの市は、殺陣(たて)が凄い。そして速い。まさに瞬殺で、カメラが動きを追えなかったというのも、あながち宣伝用の誇張ではなさそうだ。このスピードは「椿三十朗」の三船敏郎といい勝負じゃなかろうか。第一、切り合う前にクドクドと講釈をタレたりしないところがいい。正義の啖呵など切らずにいきなり狂ったように斬る。寡黙でストイックな浪人を演じるアサチュウが魅力的で、市の宿命のライバルとして、善悪とは全く異なる命のせめぎあいの興奮を観客に与えている。大義など関係ない。闘わずにはいられないのだ。

もちろんキタノ流のバイオレンスも満載で、容赦なく腕を切り落とし、指をそぐ。血しぶきが飛ぶ過激な場面も多いが、激闘の後、記憶に残るのは血の赤より仕込み杖の朱の色だった。クワの音、つまびく三味線、雨の水滴と、リズム・パフォーマンスによって物語を導き、遂にはタップの群舞を登場させて高揚感は頂点に。伝統と革新のバランスと、エンタメ映画へのチャレンジ精神に、北野武の才を見る。

最後の最後に用意された驚愕は、座頭市という超有名アウトローを固定観念の呪縛から解き放つかのようだ。極めつけの見せ場は静寂の中にある。市の最後のセリフが強烈で、シビれてしまった。リメイク流行りの昨今だが、これくらいの気概と根性を見せてくれれば、何も文句はない。

□2003年 日本映画  原題「座頭市 ZATOICHI」
□監督:北野武
□出演:ビートたけし、浅野忠信、大楠道代、他

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