シモーヌ デラックス版 [DVD]シモーヌ デラックス版 [DVD]
◆プチレビュー◆
完璧な美貌のハリウッド女優に、全盛期のI.バーグマンやG.ケリー、E.テイラーを連想する私には、シモーヌ役のレイチェルはちょっと不満だ。アカデミー賞はともかく、シモーヌのコンサートはいくらなんでもやりすぎでは。

落ち目の映画監督タランスキーは主演女優の降板で窮地に立たされる。偶然手に入れたプログラムソフトで、完全無欠の美貌と抜群の演技力を誇る女優シモーヌを創作してその場を切り抜け成功を手にするが、この世に存在しない彼女を巡り、マスコミが加熱。引っ込みがつかなくなったタランスキーは秘密を守ろうと奔走するが…。

アル・パチーノがCGを操る?!「エニイ・ギブン・サンデー」ではCDではなくカセットを愛用し、「NY最期の日々」では携帯電話すら持つのを嫌ったアナログの彼が何ゆえに。どう見てもデジタルが似合わないパチーノを、皮肉たっぷりの業界コメディにキャスティングするところがこの映画のミソだ。

映画制作現場でのCGの導入はもはや当たり前。ヨーダやゴラムという実力者もいることだし、CGキャラの演技にもオスカーを授与したらどうかと常々真剣に思っているくらいだ。いっそのことシモーヌもCG女優であることを世間に公言したら簡単なのに、パチーノ扮する落ち目の監督がそうしないのは理由がある。それはひとえに、自らを尊敬し従ってくれる生身の人物がいることを業界に知らしめるためなのだ。美貌と演技力よりも重要なのは、監督にどこまでも従順な女優であること。自分を敬愛しそのことを世間に公言する人物はCGでは困るというワケだ。

パチーノがコメディと聞くと違和感を感じるがこれが意外と似合っている。口紅をつけてキスマークの偽造に励む姿はかなりウケた。大真面目なだけに笑ってしまう。「ディック・トレイシー」の特殊メイクの演技は例外として、コメディは初挑戦と思うが、これからは遠慮なくバンバンやってほしい。自分で作ったシモーヌに振り回されてヘトヘトになる姿がお気の毒。「マトリックス」や「2001年宇宙の旅」とは違うアプローチで、機械に凌駕される人間の哀れさをコミカルに描いている。

俳優など不要な時代がやってくるかも。そんな気さえ起こさせるこの映画では、誰もが認める演技派のパチーノに「俳優なんか生身でなく作り物で充分だ!」とまで言わせる。また、盗みでお縄になったウィノナが、超わがままのセルフパロディで大ハリキリ。さすがは転んでもタダでは起きないハリウッド女優だ。そんなバカな…の設定も確かにあるが、CG女優シモーヌをホンモノと偽った完全犯罪の行く末もひねりが効いていて楽しめた。

作り物の街や遺伝子操作の人間など、リアルとヴァーチャルの狭間にこだわるA.ニコル監督。本物と偽者との境界線を探る嗜好とみた。スター偏重システムや過剰なCGという映画業界の姿を、ユーモアたっぷりに風刺しながら、虚像に振りまわされる人間そのものの滑稽さも笑い飛ばす。メディアへの警鐘と深刻に捉え、構えて観る必要はないが、まんざら有り得ない話じゃないところがちょっとコワい。

□2002年 アメリカ映画  原題「SIMONE」
□監督:アンドリュー・ニコル
□出演:アル・パチーノ、レイチェル・ロバーツ、他

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