ローマの休日 製作50周年記念 デジタル・ニューマスター版 [DVD]ローマの休日 製作50周年記念 デジタル・ニューマスター版 [DVD]
◆プチレビュー◆
モノクロならでは上品さを改めて実感。この時代の映画にはエンド・ロールがないので、ジ・エンドの文字が出たらいきなり終る。デート・ムービーとして、これをしのぐものがまたとあろうか!

某国王女アンは親善旅行でローマを訪れる。過密日程のスケジュールに嫌気がさし、深夜に宮殿を抜け出して街へ出るが、ついベンチで居眠りをしてしまう。偶然通りかかったアメリカ人の新聞記者ジョーは、彼女が病気で公務を休んでいるとされるアン王女だと知り驚愕。スクープを狙おうと、身分を隠す王女に1日だけの自由を謳歌するように勧めるが…。

オリジナルは1953年。今回のそれは“製作50周年記念デジタル・ニューマスター版”というのが正式名称だ。現代の画像処理技術の進歩には、ただただ驚く。映画界では派手なCGばかりが話題になりがちだ。しかし、気の遠くなるような地味な作業を繰り返して劣化部分を修復し、明るさやコントラストを調整して、古いフィルムを蘇らせてくれる職人技に敬意を表したい。往年の名画を大画面で見る喜びはひとしおだ。

何度も見ているのにやっぱり感動する。名作と呼ばれる映画に共通する特徴だ。物語には少しも古びたところが感じられない。オードリーの新鮮な美しさは50年たっても変わらず、気品あるドレス姿に見とれ、髪を切る場面やアイスクリームを食べるシーンにワクワクし、ヴェスパでのカーチェイスに胸を躍らせる。大根役者と呼ばれるG.ペックの、上品な受けの演技も計算されたものに違いない。あぁ、今は二人とも故人になってしまった…。

物語は1日だけの恋物語。年代によって感じ方は様々だろう。10代ならば「こんな恋がしてみたい!」と無邪気な憧れを抱くだろうし、大人の観客は人生のほろ苦さを感じるはずだ。思い通りにならない自分の立場、逃げ出して全てを忘れて楽しい時間を過ごしても、やっぱり元いた場所へ戻り、自らの道を進まねばならない。アンとジョーはお互いの気持ちを知りながら、恋心はひと言も口に出さずに相手を思いやる。別れの場面の切なさは何度見ても目頭が熱くなるから困ったものだ。

“オードリーの”ローマの休日と記憶される映画には違いないが、改めて見ると巨匠W.ワイラーの才能に敬服する。役者に余計なセリフを与えず、表情の豊かさで気持ちの変化を描写、クローズ・アップやパン・フォーカス技法など隅々まで気配りが効いている。ローマロケの観光案内的楽しさとヘプバーンという新星を配する商業的バランスの良さも見逃せない。バラエティに富む作風のせいか、器用な監督と思われがちだが、素顔は大変な凝り性で、あだ名は「ナインティ・テイク・ワイラー」。納得がいくまで90回も取り直したことがあるそうだ。「ローマの休日」も全ての場面が自然に流れていく解りやすさの裏には、俳優・スタッフの膨大な苦労が隠されている。

たった1日だが輝く恋の時間を持ったアンは、王女という身分を職業として捉えることが出来た。ラストの謁見で見せるオードリーの晴れやかな笑顔と、最後まで残ったペックが大理石の床に響かせる足音は、大人になる通過儀礼なのだ。想いを込めて見つめあう二人。人生はままならぬものと知った年齢の観客にこそ理解できる切ない名ラストシーンである。恋愛映画の名作とされている本作だが、実は含蓄深い人生指南書だったりするのだ。

□2003年 アメリカ映画  原題「Roman Holiday」
□監督:ウィリアム・ワイラー
□出演:オードリー・ヘプバーン、グレゴリー・ペック、エディ・アルバート、他

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