マッチスティック・メン 特別版 [DVD]マッチスティック・メン 特別版 [DVD]
◆プチレビュー◆
R.スコット本人は実生活で大変な潔癖症。この映画はPG-12指定。いったいどこがマズいのか調べてみると、後半アンジェラが銃を撃つシーンが「子供が銃を撃つのはよろしくない」との判断だとか。

潔癖症の詐欺師ロイは相棒のフランクの勧めで精神科医に通っている。医者が言うには、彼の潔癖症の原因は、14年前、別れた当時妊娠していた妻が産んだであろう子供の存在にあるとのこと。探し当てた娘のアンジェラは父親の職業に興味を示し、なりゆきで大きなヤマに挑むことに。突然の娘の登場で生活を乱され困惑するロイだが、迷惑さを越えて生じる娘への愛を感じ始めていた…。

監督リドリー・スコット、主演ニコラス・ケイジ、製作総指揮ロバート・ゼメキス。どうだ、この豪華さは。しかも今まで硬派な作品を作り続けたR.スコットがコメディに挑戦するという。「テルマ&ルイーズ」にはやや片鱗が見られたが、本格的なコメディは初めてのはず。しかし、そこはスコット監督、通り一遍では終わらない。物語はいわゆるコン(詐欺)・ムービーだが、そこにもうひとひねり味付けされている。

小さく手堅い詐欺を巧妙に繰り返し、孤独ながら優雅で快適な生活を送るロイ。自らをコン・アーティストと呼び、こだわりを持って仕事に励む。根拠も一貫性もないロイの数々の性癖がいちいち可笑しい。突然の娘の登場でパニック状態ながら、フツフツと芽生える父性愛。病的な潔癖症がいつしか収まっているのも娘のおかげのようである。N.ケイジは妙に子煩悩な役が似合う俳優だが、14歳の娘アンジェラを演じるA.ローマンが実に素晴らしい。実年齢は24歳。劇中で21歳と年を偽るセリフがあるが、そのどれも本当に思えるほど。オスカー俳優のケイジを相手に生き生きとした演技で観客を魅了する。10代の女の子という生き物は、可愛くて危なくて、したたかなようでもろいのだ。このコなら詐欺師の心も父性に揺らぐだろう。

ロイ、フランク、そして“見込みのある”アンジェラが加わった詐欺計画が思わぬ所からほころびはじめてからは、コメディ路線から一転、シリアスな展開に。ドンデン返しは「スティング」ばりだ。あっと驚く仕掛けは、実はシニカルで悲劇的なトリックなのだが、悲劇の先に人生の至福の時を主人公に用意し、観客を唸らせる。かくしてこの作品は、コメディ、親子愛映画、コン・ムービーというジャンルを濾過して、極上のエッセンスを抽出するというわけだ。

潔癖症という病気でロイの人となりを小きざみに描きつつ、フランクの陽気さと無神経さを組み合わせることで、物語の重要な暗示とする。巧みすぎる脚本につい感心。大仕事へとゆっくりと動く歯車は、意外な軌道を描きながら転がっていく。ラストのロイの至福の表情は、その歯車の到着点が家族の温かみを育む場所だと語っている。乾いたユーモアの裏には悲劇と喜劇が仲良く同居しているのだ。

「ハンニバル」で映像美を過剰に意識した失敗が効いたのか、今回は出来るだけ凝った映像を抑えているスコット監督。話のうまみを際立たせるための引き算か。やっぱり映画の極意は脚本にあるのだと再認識させてくれた。物語の性質上、内容を書けないのがツラい、映画評泣かせの作品ではあるけれど。

□2003年 アメリカ映画  原題「MATCHSTICK MEN」
□監督:リドリー・スコット
□出演:ニコラス・ケイジ、サム・ロックウェル、アリソン・ローマン、他

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