インファナル・アフェア [DVD]インファナル・アフェア [DVD]
◆プチレビュー◆
すばらしい脚本に、上手い俳優陣。それなのにこの覚えにくいタイトルはマズすぎる。もっと判りやすい邦題を付ければ宣伝効果も上がったものを…。

香港。大麻取引に関わる2人の対照的な男がいる。ラウが警察学校に入ったのは、マフィアのボスの命令で内部情報を流すため。一方、同じ警察学校に通っていたヤンが強制退学させられたのは、その能力を買われ、密かにマフィアに潜入し実情を探るためだった。それぞれ身分を隠して過ごした月日は10年。ある事件で互いの内通者の存在が発覚し、その裏切り者を探すことになる…。

この作品、すでにハリウッドでリメイクが決定している。昨今アジアン・ホラーの焼き直しが大流行しているが、この映画はホラーでもなければ、香港映画特有の派手なワイヤーアクションや銃撃戦でもない。もちろんおバカな笑いやクンフーとも無縁。正統派だが、いたって地味で渋いハード・ボイルドだ。こういうジャンルの映画がハリウッドに認められたのは、アジア人の一人として喜ばしいと思う。しかも、あのブラピが出演を熱望しているというから話題性も十分だ。

映画の一番の魅力はトニー・レオンとアンディ・ラウという、香港を代表する2大スターの共演だ。トニーは甘いマスク、アンディは男っぽい雰囲気と対照的なのだが、二人とも渾身の演技で熱演している。立場は違うが、共に本当の自分を隠して生きねばならない葛藤。この二人の距離が少しずつ縮まっていく展開がスリリングだ。日の光を浴びない人間のやましさが、セリフではなく表情ににじむところが実に憎い。

陰と陽と簡単に割り切るには、登場人物の設定は複雑。マフィアのボスの右腕となりながら裏社会でもがくヤンは、恋人とも別れ身も心もボロボロに疲れて極限状態に。一方、警察で出世街道をひた走り豪奢な生活を楽しむラウは、いつしかマフィアであることよりも長年住む嘘の世界の安定を手離せなくなる。複雑な内面描写は、今までの派手な香港アクションにないもので、見応え十分。華を添える女優陣も含め、脇役の描き方も丁寧で、物語に厚みを与えている。

男性ファンならどちらかに自分自身を投影し、女性ファンはどちらかに強く惹かれるだろう。しかし、突き詰めると、対照的に見える二人は、お互いを映しどこかで判りあっている鏡のような存在だ。実像と虚像といったらいいだろうか。全編を暗い映像が占めるが、時折挿入される青空が心に残る。

冒頭の回想シーンで、マフィアのボスが仏の前で言う「自分の道は自分で決めろ」というセリフがこの物語の軸になっている。原題の「無間道」とは、仏教用語で無間地獄のこと。絶え間ない責め苦を受ける場所の意味だ。無限ではなく無間というところが考えさせられる。勝ち組、負け組という単純な分かれ方ではない。他人と自分自身を一生あざむいて生きることの苦しみは、どこにも属さない地獄の苦しみなのだ。

□2002年 中国(香港)映画  原題「無間道/Infernal affairs」
□監督:アンドリュー・ラウ、アラン・マック
□出演:トニー・レオン、アンディ・ラウ、ケリー・チャン、他

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