ラスト サムライ [DVD]ラスト サムライ [DVD]
◆プチレビュー◆
T.クルーズは黒髪なので、日本人キャストの中でも浮かなかったのは大きい。ここまで日本を美化されると気恥ずかしい気もするが、日本人俳優の頑張りは誇らしかった。斬られ役の名人・福本清三にも注目。

明治維新間もない日本。軍を近代化するために米国からやってきたネイサン・オールグレンは、政府軍への反逆者とされる武将勝元に捕らえられる。捕虜となったネイサンは、彼らと暮らすうち、礼儀をつくし名誉を重んじる勝元らの静謐な生き方に感銘を受けるようになる。しかし勝元はまさに時代から葬りさられようとしていた…。

思えば今までどれほど多くのニッポン勘違いムービーを見てきただろうか。ゲイシャガール、ヤクザ、チャンバラ、そして顔には常に笑み。きっと今回も…と半分あきらめモードで臨んだが、いい意味で裏切られた。もちろん細かい部分で疑問はあるものの、開国間もない日本という難しい時代を外国人が描くものとしては、十分に合格圏内をキープしていると思う。ハリウッドと天下のトム・クルーズが本気を出しているからには、チャチなものは作らない!ということだ。

この映画が高潔な物語として仕上がっている訳は、根底に作り手の日本文化への好意があるからだ。侍スピリッツという、もはや日本人ですら正確には表現できない精神をアメリカ映画が描くのだから、良い方向に誤解しながら物語を構築するのは仕方がない。大スターT.クルーズのナルシシズムも、興行的には必要だろう。更に、幸か不幸か「七人の侍」という傑作が存在する以上、美化される責任はニッポンにもある。

捕らわれの身になったネイサンが、なぜか流暢な英語を話す勝元と対話をくりかえすうちに、彼とその周囲の人物の武士道精神に感化される。なんのことはない、誘拐や監禁で互いに長く接触するうちに、被害者が犯人に好意や連帯感を持ってしまう典型的なストックホルム症候群だ。だが、ネイサンは勝元の人柄を通り越して、一気に日本の侍魂にまで飛躍してしまう。短期間ですごい学習能力なのだが、勝元が住む村にはアメリカ人が望む美しい日本の理想の姿が確かに凝縮されていた。

問題は、ネイサンのトラウマがインディアン討伐にあるという設定だ。南北戦争の英雄は罪もないインディアンを虐殺した罪悪感から、逃げるように日本にやってくる。そこには同じく滅びていくサムライがいたという図式になるが、この設定が観客に余計な混乱を与えてしまうのは否めない。インディアンと武士道は全く別モノ。同じ滅びゆくものでも、過程や理由は大きく異なる。この映画を滅びの美学と位置づけてしまうのに躊躇するのはこの点なのだ。

長い歴史の中で生まれた武士道は日本人の精神風土にも通じる。何事においてもアメリカは世界一の国というのは万人が認めるところだが、ただひとつアメリカにないものが“歴史”だ。コンプレックスに裏打ちされて生まれたサムライ賛美の物語だが、あら探しではなく、自戒のために鑑賞してこそ日本人には意義があると確信する。日本映画では実現不可能なアクション大作を、ハリウッドが良心的な偏愛を持って作ってくれたのだから。

□2003年 アメリカ映画  原題「THE LAST SAMURAI」
□監督:エドワード・ズウィック
□出演:トム・クルーズ、渡辺謙、ティモシー・スポール、他

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