女はみんな生きている [DVD]女はみんな生きている [DVD]
◆プチレビュー◆
原題の“カオス”とは、ギリシャ語で混沌、秩序が生まれる前を指す言葉。無駄のない脚本といい、笑いのセンスといい、近年見たフランス映画では5本の指に入る秀作。お母さん役のリーヌ・ルノーは実は超有名なシャンソン歌手だ。

エレーヌは平凡な主婦。経済的にも恵まれ、一応仕事もしているが、身勝手な夫とわがままな息子の世話をやきながら漠然とした毎日を送っている。ある日、路上で怪しげな男達に追われる血まみれの娼婦から助けを求められるが、やっかいごとが嫌いな夫は車のドアをロックしてしまう。エレーヌはなぜか彼女のことが気になって、翌日からパリ市内の病院をあたってその女性を探しはじめるが…。

最近はハリウッド調のアクション映画なども作っているが、フランス映画といえば、伝統的に会話中心で人間心理を探る作風のものが多い。思わず眠気を催す人がいるのも判る気がするが、この映画は違った。何しろテンポが抜群にいい。女二人が起こしたレボリューションは、売春組織への復讐と大金を巡る極上のエンタテインメントへと発展する。

エレーヌの懸命の看病のおかげで、ノエミという名の娼婦は意識を回復。徐々に自分の生い立ちを語り始める。信じられないほど困難な人生を生き抜いてきたノエミの話を聞き終わる頃には、エレーヌの心の中でダメ亭主とドラ息子を捨て去る決心がついていた。だいたい二人して母親に居留守を使うなど、許すまじ!である。とりあえず一時帰宅、礼儀正しくブチキレてからは、スリルに満ちた冒険の日々の始まりだ。誰かに必要とされていると自覚することで、生き生きと輝き出す瞬間が眩しい。

出会うはずのない人間との出会いは、何かが変わるきっかけだ。だが、自分自身を変える大きな転機になるそのことに気付くためには、自らの心の声に忠実でなければならない。エレーヌは娼婦ノエミを見捨てるなという声を聞き、その声に従う勇気を持っていた。立場は違うが、彼女たちはそれぞれ、女を食い物にする男たちに虐げられてる。二人揃ったのが運命ならば、宣戦布告は当然の結果なのだ。

前半の女たちの出会いから後半はいっきにサスペンスタッチへ。ノエミを演じるラシダ・ブラクニは文句なく美しいが、やはり本作を魅力的にしているのは、エレーヌ役のカトリーヌ・フロ。男たちに革命を起こすのが丸顔でほのぼのとしたオバサンというところがウケる。ノエミが語る娼婦流男のオトし方も仏映画らしくてよろしい。物語は全編コミカルながら社会性もあり、アラブ社会の男尊女卑や移民問題、娼婦の実態、麻薬中毒など、シリアスな問題もきっちり盛り込んである。

登場する男たちが揃いも揃ってダメ人間ばかりなので、カップルで観るには不向きだが、女性にとってこれほど痛快な映画はまれじゃなかろうか。かといって一方的な女性賛美のフェミニズム映画ではないところが本作の優れたところだ。ラストに並ぶ4人の姿が印象的で、ここには血のつながった家族とは別の次元の結びつきが感じとれる。21世紀の人間関係の方向性を教えてくれる実に貴重な作品なのだ。

□2001年 フランス映画  原題「Chaos」
□監督:コリーヌ・セロー
□出演:カトリーヌ・フロ、ラシダ・ブラクニ、ヴァンサン・ランドン、他

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