ミスティック・リバー [DVD]ミスティック・リバー [DVD]
◆プチレビュー◆
悪役が似合うK.ベーコンを刑事役に据えたのがおもしろい。巧みな演出は素晴らしいが、何しろ後味が悪いのが難点。

小さな食料品店を営むジミーの娘が惨殺される。事件をきっかけに、幼なじみの3人の男が25年ぶりに再会することに。ジミーは被害者の父、デイブは容疑者、さらにショーンは刑事として。彼らは、幼い頃、路上で見知らぬ男たちに声をかけられ、デイブ一人が連れ去られて性的暴行を受けるという過去を共有していた…。

クリント・イーストウッドが監督した作品は、これで24本目。そんなにあったのかと正直驚いているが、彼が“出演しない”作品となると、本作を含めて4本しかない。圧倒的に自分が出演してしまう俳優監督で、その最高峰はオスカーにも輝いた「許されざる者」だ。一方、彼が出ない作品としては、本作が間違いなく最上のものになるだろうと確信する。

少年期の性的暴行に直接的な描写はない。ショーン・ペン演じるジミーが犯罪の世界に身を置いていた過去もストレートには描かれない。暴力を直に描写しないことで、かえって残虐性を際立たせる老練な演出だ。ミステリーの形をとってはいるが、イーストウッド監督は、犯人探しよりも3人の男たちの人間ドラマに焦点をあてている。彼らの心の奥に付けられた古い傷跡が新たな悲劇を生みだすのがやりきれない。

マッチョでアクション派スターのイーストウッドだが、彼の出演作で評価が高いものを見ると善悪を併せ持つキャラクターが多いことに気付く。勧善懲悪を好むアメリカ映画の中では異色なのだ。それは、彼がセルジオ・レオーネ監督により俳優として飛躍したことと無関係ではない。このイタリア人の寡作監督は、常に悪の中の善、善の中の悪を描き続けた。イーストウッドのスター性と、暗くよどんだ複雑な物語。アンバランスさもこの映画の大きな魅力だ。

意外な犯人と、新たに生まれた悲劇の衝撃。悲痛な思いがラストにじわりと広がり、消せない染みとなる。そこで観客ははじめて、脇役かと思われていた二人の女性、家族思いのジミーの妻と、脆い精神を持つデイブの妻が重要な役割であることを発見するだろう。男性中心のイーストウッド作品で、新しい試みのようで目を引いた。3人の男性キャストは、いずれも実力派揃い。それぞれの役を取り替えても、興味深いものになりそうだ。この映画の完成度は、深い人間ドラマと共に、キャストのアンサンブルの勝利でもある。

□2003年 アメリカ映画  原題「Mystic River」
□監督:クリント・イーストウッド
□出演:ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケビン・ベーコン、他

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