シービスケット プレミアム・エディション [DVD]シービスケット プレミアム・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
奇跡のカムバックの実話は、誰にでも勧められる“いい話”。登場人物たちは、挫折して傷ついてはいるが、皆、善人。悪い人が一人も出てこないストーリーに、物足りなさも。競馬中継のラジオ・アナウンサーのパフォーマンスが楽しい。

1938年、大恐慌時代のアメリカ。最愛の息子を亡くし失意の大富豪ハワード、時代の波に追われ行き場を失ったカウボーイのスミス、大恐慌で一家が離散し、家族を失ったジョッキーのレッドの3人は、一頭の馬によって巡り合う。その馬は暴れ馬のシービスケット。3人の男たちは見捨てられたこの馬に自分たちの夢を託すが…。

この話が実話と知ったとき、アメリカン・ドリームとは良く言ったものと感心した。アメリカ人が好む言葉の“セカンド・チャンス”を信じるには、こういう奇跡の物語が不可欠だ。1930年代は、それが厳しい時代であったと同時に、まだ人の心におおらかさがある良き時代だったのだと判る。

暴れ馬のシービスケットは、サラブレットの落ちこぼれだ。ケガをして命を奪われようとしていたところを助けられるのだが、チビ馬のくせにめっぽう気が強い。勝気で気位が高いが、どこか寂しがり屋なのは、潤んだその目を見ればわかる。このシービスケットを、俳優たちと同列の一人のキャラクターとして扱っているところが、この映画の最大の魅力だ。馬の目線と同じ高さにカメラを据えたレースシーンは迫力で、怒涛のスピード感。劇中には多くの本物のジョッキーが参加してる。

登場人物は皆、心に傷を負い大切な何かを失くした男たち。特に騎手のレッドは、視力の低下や事故によるケガと、身体的にも試練が続く。ベテラン俳優に混じって熱演するトビー・マグワイアはこの役のために10kgもダイエットしたというから根性がある。すっかり見直してしまったが、それでもこの役に「彼だろうか?」と疑問がわくのだ。マグワイアが演じた超人的なコミックヒーローと、何度も挫折を繰り返す騎手という役に、どうしても違和感を感じてしまう。マグワイアの演技は素晴らしいが、別のキャスティングも考えられたと思う。

馬を描く映画は沢山あるが、競馬を物語の軸にした作品は多くない。子役時代のエリザベス・テイラーの「緑園の天使」などを思い出すが、やはりレースシーンの迫力を出すのは困難だった。本作には、何より臨場感溢れるレースの場面がたっぷり用意されている。是非、大画面で味わってほしい。観終われば、もれなく“希望”のおみやげ付きだ。141分の力作だが、全く長さを感じさせない映画であることも付け加えておきたい。

□2003年 アメリカ映画  原題「Seebiscuit」
□監督:ゲイリー・ロス
□出演:トビー・マグワイア、ジェフ・ブリッジス、クリス・クーパー、他

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