ニューオーリンズ・トライアル スタンダード・エディション [DVD]ニューオーリンズ・トライアル スタンダード・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
ハックマンとホフマンは実は無名時代からの親友同士で、今回が初共演。裁判所のトイレで、本音でやり合うシーンは迫力満点だが、二人がサシで言葉を交わす場面はこの1箇所のみ。もうちょっと名優同士の競演を見たかった。

銃を乱射し11人を殺害した男が自殺。2年後、犠牲者の妻が銃器メーカーを相手取って民事訴訟を起こす。原告側の弁護士、被告側に雇われた陪審コンサルタント、陪審員に選ばれた青年と、陪審員の票を売ると持ちかける謎の女がからみあい、裁判は評決の奪い合いへと発展していく…。

原作はリーガル(法廷)サスペンスの名手で、ベストセラー作家のジョン・グリシャム。もともとはタバコ訴訟の設定だが、現代にマッチする銃犯罪に置き換えられている。提案したのはD.ホフマンで、彼の銃犯罪への関心の高さが伺える。アメリカの陪審員制度の問題点を突き、骨太なサスペンスに仕上がった本作。日本でも導入が検討されている陪審員制度だけに、興味をかりたてられる。

陪審裁判は実際には数は少ないが、和解や示談とは無縁なだけに、いざ法廷に持ち込まれると徹底的な対決裁判となる。そこで重要になるのは、陪審コンサルタントの存在。彼らによって裁判の行方がどうにでも転ぶ様は驚かされた。市民の生活や個人の性格を、ハイテク技術を駆使して調べ上げ、裁判に有利な人選へと導く巧妙で緻密な手腕が凄い。裏でこんな組織的な暗躍が行われていては、裁判の公平性など信じられなくなってしまうじゃないか。法廷の駆引き以前に、勝負はついているのだ。

J.キューザック扮する青年が何かを企み陪審員にもぐりこんでいて、金で票を売ろうとするレイチェル・ワイズの謎の美女とも関係があるらしいことは早い段階から示される。何のために?この疑問が物語を引っ張るが、全ての謎が解けたときアメリカ社会の腐敗と犠牲者の悲しみが伝わってくる。金と権力の前で、正義の意味は変わってしまうのか。

G.ハックマンとD.ホフマンの2大俳優を含め、実力者が揃ったが、全員が善悪両方のキャラクターを演じられるタイプであるところがいい。先読みできないおもしろさが物語の行方をスリリングなものにしてくれた。一筋の希望とある種のカタルシスを持って映画は終わるが、裁判の行方や主人公たちのその後より、アメリカ社会の病んだ姿に考えさせられてしまう。かつて「12人の怒れる男」で描かれた“正義は必ず存在する”的な世界は、今のアメリカには期待できないのだろうか。

□2003年 アメリカ映画  原題「Runaway Jury」
□監督:ゲイリー・フレダー
□出演:ジョン・キューザック、ジーン・ハックマン、ダスティン・ホフマン、他

人気ブログランキング用バナー

←この記事が気に入ったら、ポチッとクリックしてもらえると嬉しいです\(^o^)/