ひめごと [DVD]ひめごと [DVD]
◆プチレビュー◆
カイエ・デュ・シネマが2002年度ベスト1作品だが、正直言って、なぜこれが1位なのか?!と首をひねっている。時折、画面を横切る死神と思われる人物の描写が殆ど効果がないのも疑問。

ヌードクラブのダンサーのナタリーにあこがれるサンドリーヌは、店とのトラブルでクビになり、彼女と同居することに。ウブだったサンドリーヌは、ナタリーの指南で男を虜にする術を教えられる。運良く一流企業で働くことになった二人は、その美しさで次々に男性を手中にするが、思わぬ強敵の出現で、事態は予測もしない方向へと発展していく…。

カイエ・デュ・シネマと言えば、フランスの権威ある映画批評誌で、そこからゴダールやトリュフォーを生んだことでも有名だ。作家主義を貫き、独自の視点で映画を語るこの雑誌は日本でも知識層を中心に尊敬されている。そんなカイエ・デュ・シネマが2002年度ベスト1に選んだ作品がこの「ひめごと」。かの雑誌で1位に輝いた映画と聞いただけで、何やらありがたく感じてしまうから不思議なものだ。

美しい女が肉体を武器にのしあがっていく。このストーリーに目新しさは全くない。思わせぶりなオープニングから、女二人の権謀、後半の現実離れした世界まで、全てがエロチックな香りに満ちているが、同じ官能ドラマを描くにしてもアメリカ映画やヨーロッパの他の国とフランス映画のそれとは随分違う。ハリウッド映画のくっきりとした判りやすいエロスや、イタリア映画の天真爛漫なバイタリティとは違い、フランス映画は登場人物の普通っぽさが特徴。ヌード・クラブのダンサーが都合よく企業にもぐりこんでも、違和感がない代わりに、日常のどこにでもある場所が官能の落とし穴へと繋がっていることを教えてくれる。彼女たちが、肌を見せる場面より、服を身につけている時の方が色気があるのがその証拠だ。何でもないものをエロチックに見せるブリソー監督の巧妙な作戦なのだろう。

冒頭の全裸シーンから度肝を抜かれるが、全編に漂う異様な雰囲気は最後まで変わらない。同性愛、3P、近親相姦と次から次へとタブーが登場し、性描写は過激なのだが、それはどこか、あらゆるタイプの絵を陳列して観客に静かに披露する画廊のような趣だ。オフィスでのやりとりや企みはいたって稚拙なもので、セックスを武器にすることに熱中する女たちは、滑稽にさえ見える。しかし、この物語の主旨は緻密なかけひきなど、もとより念頭にはないのだ。終盤は、ファンタジー・サスペンスと呼んでもかまわないだろう。

肉体を駆使して男たちを虜にした二人の前に現われた難敵は、常識の枠を離脱した冷酷な生き物だ。支配と隷属の役割は、世の中のどこにでも見出すことが出来るもの。ただならぬ世界は、日常と隣り合わせに存在しているのだ。銃声が響いた後、ゲームに勝ったのは果たして誰だったのだろうか。

□2002年 フランス映画  仏語原題「Choses Secretes」
□監督:ジャン・クロード・ブリソー
□出演:サブリナ・セヴク、コラリー・ルヴェル、ロジェ・ミルモン、他

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