マスター・アンド・コマンダー [DVD]マスター・アンド・コマンダー [DVD]
◆プチレビュー◆
風を受けて大海原をゆく帆船の美しさが絶品。ラッセルが、チラリと登場するブラジル人美女を思わず見つめるなど、女好きな資質をうかがわせる演出に笑った。

19世紀。仏のナポレオン軍の武装船に苦戦する英国海軍のサプライズ号は遠く母国を離れてブラジル沖にいた。サプライズ号には戦力不足を補うため、まだ幼い少年たちの姿もあったが、彼らはどんな時も艦長ジャック・オーブリーを信じていた。無敵にして“ラッキー・ジャック”の異名をとる名艦長オーブリーは、明らかに不利な状況の下、奇襲作戦や大胆な決断で敵に戦いを挑んでゆく…。

この映画、配給会社の方針なのか“困難な闘いに挑むいたいけな少年たち”という路線で宣伝している。往年の名子役マーク・レスターに似た新人、マックス・パーキスの可憐な容姿も手伝って、子供を使った泣かせの映画かと勘違いしてしまいそうだ。しかし、実は本作は、人の上に立ち、部下を導く難しさを描いた大人の男のドラマ。その意味で、管理職必見の映画と言える。

R.クロウ演じるオーブリー艦長はあらゆる意味でお山の大将的な存在だ。クロウは、ダイナミックで時に横暴な指導者を風格たっぷりに演じている。彼を“剛”だとすると、P.ベタニーが演じる船医のマチュリンは“柔”。艦長の無二の親友で、知的な彼は船の乗組員からも一目置かれている。この二人の性格や容姿の違いにメリハリがあり、物語の価値観のバランスをシーソーのように揺るがせて、魅力あるものにしている。自信たっぷりに采配を振るう人物も、心は常に揺れているのだ。

現代に置き換えると、どう見ても自己中なオーブリーがカリスマ性に満ちた素晴らしい存在に見えるのは、戦時下の大海原という舞台が整っているから。船の中はひとつの大きな家族で彼はその家長なのだ。命懸けで戦うことの意義を信じさせてくれる力強い人間を求めるのは、年端もゆかない少年たちには自然な感情だろう。指揮官ひとりの力量が勝敗の行方を決める単純さは、現代とは異なるかもしれないが、ワイルドで封建的に見えて実は情に厚く、常に部下を思いやるオーブリーを、現代の私たちも愛さずにはいられない。

但し、船の中に存在するあからさまな階級意識は批判の対象になりそうだ。映画があくまでも支配階級の貴族の目を通して描かれるのも気にはなる。しかし、英国の帝国主義を前提にした物語なのだから、ここは目をつぶるべきだと思う。むしろ、支配階級に生まれてしまった人間に求められた決断力や、責任の重みを感じ取りたい。男の友情と、指導者としての資質を問う本作。迫力の海上戦闘シーンや映画史上初のガラパゴス諸島ロケなど、多彩な魅力に溢れた冒険大作だ。

□2003年 アメリカ映画  原題「Master and Commander:The Far Side Of The World」
□監督:ピーター・ウィアー
□出演:ラッセル・クロウ、ポール・ベタニー、マックス・パーキス、他

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