イノセンス スタンダード版 [DVD]イノセンス スタンダード版 [DVD]
◆プチレビュー◆
グロテスクでエロチックな人形たちは、ポーランドの美術家ハンス・ベルメールの作品からインスピレーションを得たらしい。押井作品の常連の犬がちゃんと登場するのが嬉しい。

近未来の日本。人間は電脳化され、機械化が進んだ社会では、人とサイボーグ、ロボットが共存していた。バトーは犯罪を取り締まる公安九課の刑事だが、彼もまたサイボーグ(生きた人形)で、残されたのは僅かな脳だけという男だった。ある日、少女型ロボットが所有者を惨殺する事件が発生。人間のために作られた機械がなぜ人間を襲ったのか。バトーと相棒のトグサは、事件の捜査を担当することになる…。

映画「イノセンス」は、国内のみならず海外で高い評価を受けた「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」の続編に当たる。出来たら、いや、是非、前作を見てから鑑賞することをお勧めしたい。その方が判り易いだけでなく、この傑作アニメを隅々まで堪能することが出来るから。ちなみに、劇中に出てくる少佐というのは、前作でネットの彼方へ消えた、バトーの相棒の素子(もとこ)のことだ。

ロボットの暴走という事件を通して、人間の存在価値を問う物語は、ビジュアル表現といい、テーマの深さといい、さすがは押井守だと唸ってしまう。人間は何故自分の似姿<人形>を造ろうとするのかという疑問は、突き詰めると“人間とは何か”という問いに通じる。劇中には、人間とロボットの間にも、一部だけ人間で他は機械化されたサイボーグ、ネットワーク上の意識のみの存在など、さまざまな形の生命体が登場する。どこまでが人間なのか。自分は本当に存在しているのだろうか。ここではハッカーは意識を混乱させる、人間を越えた存在となって驕り高ぶる。

始まってすぐに、耽美的な世界に酔いしれるのは必須。映像はあきれるほど手が込んでいる。微にいり細にいり色や構図が素晴らしく、更に全体としてもまとまるというのは口で言うほど簡単なことではない。しかも、髪の毛や皮膚の毛穴まで実写に近づけることに没頭するような愚かなマネはしていない。人物の表情はあくまでアニメの味わいを残していて、これが作品の大きな魅力となっている。建築物や都市の造詣の重要性を認識して作られている背景は、資金と労力を惜しみなく費やしたもの。オリエンタリズムに溢れた祭祀は、様式美の極みで、しばし見とれた。

聖書、ミルトンの「失楽園」、漢詩などから引用されたセリフの数々は、難解な印象を与えるが、“読み解く”という意味では、インテリ層のツボにもハマる。美しい映像と知的な世界感は、未だにアニメーションを子供の娯楽と勘違いしている人にこそ見て欲しいもの。人間の傲慢さに警鐘を鳴らす深いストーリーの鍵は、動物と子供。改めてジャパニーズ・アニメの質の高さを実感させてもらえる、押井ワールドのラビリンスへ是非。

□2004年 日本映画  英語原題「INNOCENCE」
□監督:押井守
□声の出演:大塚明夫、田中敦子、山寺宏一、他

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