ペイチェック 消された記憶 [DVD]ペイチェック 消された記憶 [DVD]
◆プチレビュー◆
脚本でオスカーを取った才能の持ち主と知っていても、どうしてもベンアフが知的な人物には見えないので困る。ジョン・ウー映画のお約束の“白い鳩”も健在だ。

近未来。コンピューター・エンジニアのマイケルは、極秘の仕事を請け負い、記憶消去を条件に企業から多額の報酬を得ている。だが、特別に提供された莫大な報酬と引き換えに3年間の記憶を消された後、彼が受け取ったのは、報酬を辞退した自分の誓約書と19個のガラクタだった。混乱する彼はFBIからも追われるハメになる…。

思えば最近の映画には、記憶を扱ったものが何と多いことか。「ボーン・アイデンティティー」「メメント」「カンパニー・マン」「過去のない男」と枚挙にいとまがない。本作の原作者のディックの小説で、映画化された「トータル・リコール」や「JM」も記憶がテーマだ。人類に残された最後の秘境。それは脳なのか。

「男たちの挽歌」のジョン・ウー、「パール・ハーバー」のベン・アフレック、「パルプ・フィクション」のユマ・サーマン。何やら食い合わせの悪そうなメンバーが集まって、SF界の巨匠フィリップ・K・ディックの小説を映画化するという。あの名作SF「ブレードランナー」でさえ原作ファンからは非難の嵐だというのに。イヤな予感が胸をよぎり、期待度は限りなくゼロに近かった。結果、このネガティブな姿勢が功を奏して、予想外に楽しめてしまったのだ。人間、無欲が一番である。

とりあえず近未来SFなのだが、SF色は極めて薄味。“ほぉ”と思うのは記憶を消す場面くらいだ。その分、ウー印のアクションが炸裂し、バイク・スタントや銃撃戦など派手な場面の大盤振舞い。展開はスピード感に溢れているため、飽きることはない。封筒に入った19個のガラクタがひとつひとつ意味を持ち“活躍”する様子は、突っ込みどころでありながら、中々楽しい仕掛けだ。ハリウッド切っての“イイ女”ユマ・サーマンの役柄に魅力が乏しいのが残念だが、ジョン・ウーの作品で女性を魅力的に描けたためしなどないので、潔くあきらめよう。

SFは、ある意味で虚構を描くもの。虚構は現実味のある設定からスタートしてこそ信じてもらえるというものだ。テクノロジーの誤用というテーマには多くの観客が共感するに違いない。3年間の空白を遡るタイム・スリップ的な逃亡劇は、まるでゲームのよう。金のために自分の記憶を切り売りしていた男に残っていたひとかけらの道徳心が鍵となる。ペイチェックとは小切手で支払われる報酬のことだ。映画のラストには気の利いた“報酬”が主人公に用意されている。人間ドラマの深みにはイマイチ欠けるが、限りなく今に近い近未来のサスペンスとして楽しめる作品だろう。

□2003年 アメリカ映画  原題「PAYCHECK」
□監督:ジョン・ウー
□出演:ベン・アフレック、ユマ・サーマン、アーロン・エッカート、他

人気ブログランキング用バナー

←この記事が気に入ったら、ポチッとクリックしてもらえると嬉しいです\(^o^)/