ドッグヴィル プレミアム・エディション [DVD]ドッグヴィル プレミアム・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
ヒロインを徹底的に追い詰めるのがこの監督の趣味。ひょっとしてSなのか?!好き嫌いは大きく分かれると思うが、ただ者ではないことは確かなので、次回作が最も気になる監督の一人と言える。

大恐慌時代のアメリカ。山間の小さく貧しい村ドッグヴィルに、謎の美女グレースが逃げ込んでくる。ギャングに追われている様子の彼女を、村人は協議の末にかくまう事に。助けてもらう代わりに村の仕事の手伝いをするグレースを、人々は最初は平和に迎えていたが、ある出来事をきっかけに豹変。善意的に見えた彼らは、グレースに対してエゴをむきだしにし、彼女を奴隷のように扱いはじめる…。

相当数の映画を見てきたつもりだが、こんなとんでもない作品にお目にかかったのは初めてだ。床に白い線が引かれただけのセットの上で、俳優たちは見えないドアをノックし、そこにいない犬の頭を撫でる。前衛的の一言では片付けられない異様な雰囲気の中に、大スターがひしめくアンバランスさにも驚かされた。物語は、エピローグと9つの章に分かれていて、終始、不思議な穏やかさで進行する。しかし、語られるのは、この上なく邪悪な人間の姿なのだ。

最近のN.キッドマンの輝きは並みではないが、この映画でも、彼女は根性が座ったところを見せている。何しろ、オスカー女優がこんな挑戦的な実験映画に出演するだけでもすごいのに、その役柄ときたら、とことんいたぶられる役なのだ。裏切られ、こきつかわれ、レイプされ、首に重りのついた鎖を付けられるすさまじさ。ニコールがなぶりものにされる姿は、必見と表現するには気の毒すぎるが、何しろこの映画の見せ場には違いない。

自分より明らかに裕福で美しい人物を支配下に置くことで生まれる人間の支配欲が、容赦なく描かれる。だが、グレースの正体が明らかになるラストには思いもよらぬ展開が待っていて、一種のカタルシスが味わえる仕組みだ。小さなコミュニティで保たれていたバランスが、外部からの侵入者によって崩壊する物語は約3時間の長編。それほどの時間をかけて描く話だろうかとも思ったが、そう感じるのは、見終わって随分たってからだ。見ている間は全く飽きることはなく、物語にグイグイ引込まれる。奇抜な手法にもかかわらず、違和感がほどなく消えるのもこの作品にそれだけ牽引力がある証拠だ。

本作はトリアーが提唱したドグマの作品ではないが、その精神は生きていると思う。これは、民主主義が内包する暴力を、斬新なスタイルで見せてくれる映画だ。トリアー監督が、アメリカそのものを批判しているのは明らかだが、ここに描かれるドラマは時代や国境を越えた普遍性を持っている。映画の“新しい可能性”を感じさせてくれる作品と言えるだろう。

□2003年 デンマーク映画  原題「DOGVILLE」
□監督:ラース・フォン・トリアー
□出演:ニコール・キッドマン、ポール・ベタニー、ローレン・バコール、他

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