グッバイ、レーニン! [DVD]グッバイ、レーニン! [DVD]
◆プチレビュー◆
ドイツ映画も変わってきたなぁとしみじみ感じる。これがオスカーにノミネートさえされなかったとはなんとも不満。劇中で語られるW杯は、西ドイツが優勝した1990年イタリア大会だ。「ルナ・パパ」のチュルパン・ハマートバが可愛い。

東ドイツのベルリン。熱烈な愛国者である母クリスティアーネが心臓発作で倒れる。8ヶ月後に奇跡的に目覚めた時には、ベルリンの壁は崩壊、国家は激変してしまっていた。もう一度強いショックを与えたら母にとって命取り。その日から、息子のアレックスは、以前と何も変わらないフリを装うために涙ぐましい奮闘をすることに。

にせものの世界を作り上げる話は、今までもなかったわけではない。コンピューターによる仮想現実、TV放送のための偽りの人生…。しかし、こんなにも可笑しくて、哀しいニセモノ世界は始めてだ。この物語は、世界史上の大事件を必死で隠そうとする孝行息子の、心優しいマトリックスなのだ。

自宅療養中の母の部屋に、今はもう無くなってしまった社会主義ワールドを作り出すため、あの手この手で奮闘する姿が笑える。ゴミ箱からピクルスの瓶を拾って中身を詰め替え、昔のダサい服を無理やり姉に着せて母親の周辺の日常を取り繕う。傑作なのは、ニセのTV中継だ。ニュース番組で手作りの東ドイツの栄光を伝えるアレックスは、いつしか自分が作り上げた世界に夢中になっていく。

母を失いたくない一心でウソがエスカレートしていき、遂に収拾がつかなくなる日がやってくる。この時観客は、新しい世界を受け入れられなかったのは、病気の母親よりもむしろ息子の方だったのではないのかと気付くだろう。悪しき時代として語られる社会主義は、ここではノスタルジーを誘う懐かしい世界として描かれる。壁の崩壊も東西ドイツの統一も歴史的大事件。だが、激流の渦中にいても市井の人々にとっては、愛する家族とともに生きていくことが何よりも大切なのだ。

自由の空気は、タンス貯金を紙くずにしてしまったが、憧れの宇宙飛行士に会い、母の思わぬ告白で父親の亡命の真実を知る。世界を止めたつもりでも、やはり時は流れていくのだ。サッカーW杯のドイツの優勝から東西ドイツの統合へ。母は、はたして真実に気付いていたのだろうか。平凡で愛すべき人々のそれぞれのいたわりが伝わってきて、温かい気持ちになる。家族の絆は極上の笑いの中に刻みこまれていた。

□2003年 ドイツ映画  原題「GOOD BYE LENIN!」
□監督:ヴォルフガング・ベッカー
□出演:ダニエル・ブリュール、カトリーン・ザース、チュルパン・ハマートバ、他

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