コールドマウンテン [DVD]コールドマウンテン [DVD]
◆プチレビュー◆
話はメロドラマだが真面目な力作。脱走兵士狩りに執念を燃やす男たちの心情がやや説得力に欠けるのが気になるし、エイダへの執着もあっさりとしたものだが、文芸ものを得意とするミンゲラ監督の品格ある演出で、うまくまとまった。

南北戦争末期の19世紀半ば。南軍の脱走兵士インマンは、ただひたすら故郷のコールド・マウンテンを目指して旅を続けていた。脳裏に浮かぶのは、彼を待つ愛しい人エイダの面影。ただ一度の口づけを交わした彼女への愛だけを信じて、過酷な道のりを歩むインマン。一方残されたエイダもまた、生活苦や様々な試練と戦わねばならなかった…。

「イングリッシュ・ペイシェント」でもそうだったが、ミンゲラ監督は自然描写がとても巧みだ。連なる山々は青く霞み、尾根沿いに恋人たちの想いが伝わるよう。辺境の地も四季のうつろいで美しく印象的なものとなり、映画のもうひとつの主役となっていく。懐かしい風景はそこに愛する人がいるということと共に、主人公を帰路へと向かわせる説得力に溢れていた。自分が生まれ育った場所。それは何よりも強い磁場となる。

たった一度のキスでお互いを思い続けるという設定には、J.ロウとN.キッドマンは少し年齢が高すぎるのではないかと思うが、何しろ演技力には定評のある美男美女なので、多少の無理は押し通してしまう勢いがあった。世間知らずの深窓の令嬢が逞しく成長する姿は、多くの観客に好感を与えるだろうが、これは、やや強引に登場してくる女性ルビーの存在によるところが大きい。レニー・ゼルウィガー演じる野生児のようなルビーは、エイダの頼もしい協力者。美しさでニコールに張り合うなどという愚かしいことはせず、思い切り野太く“ドスコイ”なキャラとして演じたことで、レニーはルビーに生命力を吹き込んだ。思ったより賢い女優のようである。

旅の途中で出会う様々な登場人物も、皆サイド・ストーリーが作れそうなほど緻密な設定だ。不良牧師のフィリップ・シーモア・ホフマンと若い戦争未亡人のナタリー・ポートマンが特に印象深い。戦争はいつの時代にもさまざまな悲劇を生むのだ。緑豊かな風景に響く、カントリーミュージックの歌声が恋人たちを運命の再会へと導く。未来が見えるという伝説を持つ井戸で目にしたものは、美しくも哀しかった。

主人公インマンは脱走兵だが、映画は軍隊から逃げて故郷を目指す彼を、終始肯定的に描いていく。映画前半の激しい戦闘場面は迫力十分だが、そこに個々の人格描写はなく、匿名の命が奪われる地獄絵があるのみだ。一組の男女のラブ・ストーリーと故郷を目指すロード・ムービーのスタイルではあるが、作り手のスタンスは明らかに反戦にある。

□2003年 イギリス・イタリア・ルーマニア合作映画  原題「COLD MOUNTAIN」
□監督:アンソニー・ミンゲラ
□出演:ジュード・ロウ、ニコール・キッドマン、レニー・ゼルウィガー、他

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