テッセラクト [DVD]テッセラクト [DVD]
◆プチレビュー◆
期待したほど物語に斬新さはなかったのでちょっと残念。今の時代、観客が驚くような“新しい”手法というのはなかなかない。アレックス・ガーランドの原作小説の方が案外おもしろいのかも。

バンコク、午後5時47分、うらぶれたホテル。停電が起こり、時計が止まる。英国人の運び屋ショーン、瀕死のタイ人の女殺し屋、盗みの常習犯のベル・ボーイの少年。一見、何の関係もなさそうな様々な人々の運命が交差し始める。

タイトルのテッセラクトとは、数学用語で四次元立方体を意味する。三次元(キューブ)までは図にして見せることが可能だが、四次元は視覚化不可能。つまり神の視点というわけだ。映画では同時刻に様々な人物が別々の事件に遭遇する。登場人物はお互いの存在や係りには気付いておらず、観客だけがその繋がりを理解し、組み立てることができる。人生の断片がパズルのようにひとつの結末に収束する斬新な構造だ。

…などと言うが、落ち着いて考えれば、このテの手法は難解な学術用語に例えるほど目新しいものではない。何のことはない、Q.タランティーノの「パルプ・フィクション」と同様のスタイルなのだ。最近ではA.G.イニャリトゥの「21グラム」もこのタイプだろう。ただ、本作では手法が徹底していることと、断片化された映像の斬新さで観客をひきつける。

英国人の麻薬の運び屋ショーンの不安が全ての事件の引き金となる。同じホテルに泊まっている女性心理学者、ベルボーイのタイ人少年、マフィアのボス、女殺し屋。複雑に絡み合った彼らの運命は、ラストの悲劇的結末へとなだれこむが、その物語は劇画調になったり、ドキュメンタリー・タッチになったりと目まぐるしい。観客は、頭を整理しながらストーリーを組み立てつつ追わねばならないので集中力が必要だ。その意味で、見るものの知性を刺激する映画と言える。

不安を煽るように多用される極端なクローズ・アップの映像と、猥雑なバンコクの街の空気をすくい取る色彩感覚。観客に挑戦するような怪作と呼ぶべきだろうか。監督のオキサイド・パンはタイ人で、舞台もバンコクだが、スタッフの半分は英国人。製作は日本だ。セリフの大半が英語なのは国際市場を視野に入れてのこと。ハリウッド以外の地域の幅広い国際協力で映画が作られている事実は見逃せない。

□2003年 タイ・英国・日本合作映画  原題「The Tesseract」
□監督:オキサイド・パン
□出演:ジョナサン・リース・マイヤーズ、サスキア・リーヴス、アレクサンダー・レンデル、他

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