ディープ・ブルー −スタンダード・エディション− [DVD]ディープ・ブルー −スタンダード・エディション− [DVD]
◆プチレビュー◆
あまりに素晴らしい映像体験に幸せを感じる映画。しかし、同名タイトルでレニー・ハーリン監督のサメ映画があるので、混同は必須。副題を付けるなどの配慮が欲しかった。

イギリスBBCが7年の歳月をかけて製作した、海洋ドキュメンタリー。世界約200箇所のロケ地を巡りながら、海とそこに生きる生物の知らせざる姿を追う。音楽はベルリン・フィルが担当し、壮麗な音で映像をより効果的に引き立てている。

地球上の生物の98%を育むという海。ブルーが基調の映像が好感を持たれるのか、海を題材にした記録映画は昔から人気のジャンルだ。過去にもジャック・イブ・クストーの「沈黙の世界」「太陽のとどかぬ世界」やレニ・リーフェンシュタールの「原色の海」など、興味深く美しい作品が存在した。しかし本作は、その映像の貴重さ、美しさ、構図の見事さなどにおいて群を抜いている。単なる記録映画を超えて、アートと呼べる芸術作品なのだ。

イギリスのBBCは自然ドキュメンタリーの分野では実績と実力を併せ持つ。90分間魚の映像を流すという、およそ商業的とは言えないプロジェクトを見事にまとめてみせた。最高のスタッフが最大の努力を払った結果で、文句なく感服してしまう。膨大なリサーチ、長期にわたる撮影、200箇所にものぼるロケ地…。きまぐれな自然を相手に、忍耐と情熱で、感動の瞬間を捉えることに成功している。また、照明をはじめとする撮影機材と技術的進歩が基となっているのは言うまでもない。

ボール状に群れるイワシの大群、クジラの親子とシャチの攻防、ペンギンの決死のスクラム、愛らしい北極クマ。ユーモアと自然の厳しさが混在する。トロピカルで美しいさんご礁の危険な習性、自ら発光し生き延びた幻想的な深海生物。海底火山の周囲にさえ、微生物が存在する。見所を挙げたらきりがないほど。美しくも壮絶な弱肉強食の世界に、ただただ見惚れて酔いしれる。

静かで静謐な営みとダイナミックな生命が交錯する海。美しい映像は十分すぎるほど心を癒してくれるが、それだけではない驚きと喜びが作品の中に満ち溢れている。いとも軽やかに空間を移動して容易には体験できないものを映像化し、劇場にいる観客に現実をしばし忘れさせる。映画とは、つきつめるとこのような興奮の体現かもしれない。こういう作品こそ“映画”と呼びたい。

□2003年 イギリス・ドイツ合作映画  原題「DEEP BLUE」
□監督:アラステア・フォザーギル、アンディ・バイヤット
□出演:マイケル・ガンボン(ナレーション)

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