華氏 911 コレクターズ・エディション [DVD]華氏 911 コレクターズ・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
ゴダールはこれを見て「ブッシュはこれほどバカではない」と言ったそうだが、この映画をこのままうのみにするほど「観客はバカではない」。日本でこんな映画が生まれる日はいったいいつの日やら…。

9.11テロの後、イラク戦争へと突入したアメリカ。マイケル・ムーアは、2000年からブッシュの足跡を追っていた。大統領選挙時の様子、テロ勃発直後の対応、ビン・ラディン一族とのつながりやイラク戦争の舞台裏など、驚きの映像を登場させ、ブッシュ政権の疑惑を明白にしていく。

本作に対し、政治的に偏った作品で映像メディアによる情報操作だという非難の声もあるだろう。だが、作者の主義主張が表れるのが映画というものだ。M.ムーア監督ははっきりとブッシュ批判のスタンスに立っているのは周知の事実。全ての映像はブッシュ政権の“悪”の部分だけをおもしろおかしく繋げて構成されている。編集も抜群に上手い。音楽の使い方、テロップの入れ方、どれをとっても笑いのツボにはまる、超絶エンタテインメント作品だ。だが、内容的には笑いごとではすまされない。

ブッシュが清廉潔白な政治家などとは誰も思っていないが、映し出される映像は全て驚愕するものばかりだ。9.11テロで多くの人命が失われたのは紛れもない事実。しかし、その報復とも言えるイラク戦争のからくりを見せられて愕然とした。映画は、9.11テロとイラク戦争の無関係性を描くことで、ブッシュ政権の懐を突く形だ。テロ勃発を聞いた大統領が、数分間何もしない映像だけでも見る価値がある。

前半はブッシュの無能さを活写して笑いを誘い、後半は戦争で犠牲になる命を米国、イラクの両方から描いていく。息子を失った愛国者の母親の姿には、多くの人が胸を熱くするだろう。戦争の意義や戦う国がどこでも、失われた命の尊さは同じなのだ。一方で、まるで企業の勧誘のように若者を軍隊に誘う様子を映した映像は無視できない。入隊するしか道はないような人間を犠牲にする戦争の側面が、淡々と記録されている。戦争が既に失業対策の一部であることの恐ろしさに気付かねばならない。

賛否両論必須の、話題の記録映画である。と同時に、観て、楽しんで、考える“お得な”映画なのだ。これが世界をリードする国のひとつである米国の実態かと思うと気が滅入るが、これほど現政権に対して批判的な作品が、公開され支持される“自由”が存在する国であることも覚えておこう。アメリカ国民が大統領選挙で出す結果が、この映画の結末だ。

□2004年 アメリカ映画 原題「Fahrenheit 911」
□監督:マイケル・ムーア
□出演:ジョージ・W・ブッシュ、他

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