16歳の合衆国 [DVD]16歳の合衆国 [DVD]
◆プチレビュー◆
頻発する幼児を犠牲にする犯罪。感情移入は全くできなかった。甘ったれるな、リーランド!自分の価値観を他人に押し付けるな!と、怒りモード全開だ。

平凡な16歳の少年リーランドは、恋人ベッキーの障害者の弟を、突然刺し殺してしまう。逮捕されたリーランドは矯正施設に入れられるが、彼は事件について、とりわけその動機について何も語ろうとはしない…。

少年犯罪を描く映画は数多い。近年ではダルデンヌ兄弟の「息子のまなざし」やガス・ヴァン・サントの「エレファント」などの秀作が思い浮かぶ。そのどれもが罪を犯す少年たちを批判するものではなく、彼らを取り巻く環境や生い立ちを検証するものだ。本作もそのスタイルを踏襲。リーランドという一見普通の青年が、なぜ殺人を犯すに至ったのかを、真摯に追求している。

監督のマシュー・ライアン・ホーグは、実際に矯正施設で教員を務めた経験を持つ。その時の体験が彼にこの映画のメガホンを取らせた。初監督作にして随分手強い題材を選んでいるが、案の定、力量不足のためか映画としての面白味には少々欠ける出来ばえとなった。犯罪にいたる理由を必死に模索するのは好感が持てる。加害者と被害者の家族にも目を向け、犯罪のその後の波紋をも丁寧に描く姿勢もいい。だが、肝心の主人公リーランドに魅力が乏しいのではお話にならない。製作も兼ねるK.スペイシーが父親役で出演しているが、彼だけが演技が上手すぎて浮いているのも残念だ。

善良で、知的で、優しい人間リーランド。彼は愛する人間に醜い世の中を見せたくなかった。傷つく人間の姿に耐えられなかった。物語は、リーランドの動機を探る教官パールの人生観の変化を同時に描き、僅かな希望の光を見出そうとしているようだ。しかし、リーランドの行動は、世間と折り合いをつける方法を知らない人間の、誤った美意識であり、正当性はどこにもない。自分の感じる悲しみを一方的に他人に被せた果ての犯罪に過ぎず、幼稚で利己的な解釈しかできない彼の思考が問題なのだ。

人一倍哀しみに敏感な人間の存在は認める。事実、世界は悲劇に満ちている。だが、リーランドの行動を肯定するわけにはいかないのだ。美しいだけでは決してない世の中で生きていくことは、ただそれだけで大変なことだ。“生きること”に挑戦している人間の命を奪う権利は誰にもない。この映画はそのことを描き忘れている。

□2003年 アメリカ映画  原題「The United States of LELAND」
□監督:マシュー・ライアン・ホーグ
□出演:ドン・チードル、ライアン・ゴズリング、ジェナ・マローン、他

人気ブログランキング用バナー

←この記事が気に入ったら、ポチッとクリックしてもらえると嬉しいです\(^o^)/