モンスター 通常版 [DVD]モンスター 通常版 [DVD]
◆プチレビュー◆
社会性はあるものの、話そのものは単純な構造。監督デビュー作としては上出来だ。実在のアイリーン・ウォーノスは2002年に死刑執行されている。少々ブサイクな外見(!)でも娼婦として商売できることにも驚く。

1986年フロリダ。生きることに絶望した娼婦アイリーンは自殺を考えるが、飛びこんだバーで同性愛者のセルビーと出会い、恋に落ちる。しかし、自分に暴力を振るう客を殺害してしまったアイリーンはセルビーを連れてあてのない逃避行へ。その後も殺人を繰り返すようになる…。

実際に映画を見て、シャーリーズ・セロンのあまりの変貌ぶりに驚いた。実物のアイリーン・ウォーノスに似せるため、特殊メイクを施しているが、13キロも増量させた体のだらしなさといったらない。肌はボロボロ、眉はなく、口もとは無愛想に曲がっている。言われなければセロンだとは気付かない。美貌は見事に消し去られていた。

不幸な家庭環境から娼婦としてしか生きる道がなかった女性アイリーン。アメリカは連続殺人鬼の宝庫だが、女性はさすがに数が少ない。映画はアイリーンが殺人鬼になるべく袋小路に追い詰められる様子を描くことで、米国社会の暴力性と偏見も追求している。アイリーンの犯した犯罪は許されることではないし、自業自得の部分も大きいが、物語が進むにつれてアイリーンの孤独が大きく浮き彫りにされていく。

主人公の不幸をあえて一つあげるとするならば、愛することを知ってしまったことだろうか。自分を蔑まずに受け入れてくれたセルビーには、全く生活能力がなかった。一緒にいたいと願うことが罪を重ねることになる切なさ。ひ弱で子供のようなセルビーが、いつの間にかアイリーンを支配していくようになる恐ろしさ。セルビーは最終的にアイリーンを裏切る。そのことをアイリーン自身、承知なのがあまりに哀れだ。

この映画は、肉体改造を含めたシャーリーズ・セロンの圧倒的な熱演を抜きにしては語れない。モンスター(怪物)とはいったい何を意味するのか。社会や家庭には様々な問題が横たわる。そして、人間とは、罪を犯しながらも愛を求める矛盾した存在なのだ。社会の残酷さと人間の歪んだ心こそがモンスターの正体だ。

□2003年 アメリカ映画  原題「MONSTER」
□監督:パティ・ジェンキンス
□出演:シャーリーズ・セロン、クリスティーナ・リッチ、ブルース・ダーン、他

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