モーターサイクル・ダイアリーズ 通常版 [DVD]モーターサイクル・ダイアリーズ 通常版 [DVD]
◆プチレビュー◆
ラストにアルベルト本人や、いかだのマンボ=タンゴ号の写真が登場し、感動を誘う。エンド・ロールが終わるまで是非見て欲しい。しかし、馬より遅いバイクとは、相当なオンボロに違いない。よくまぁ、無事で…。

23歳の青年医学生エルネストは先輩のアルベルトと共に中古のバイクで南米大陸を横断する旅に出る。喘息持ちで病弱なエルネストには無謀とも思える計画だった。南米の豊かな自然と、貧困に喘ぐ人々を目の当たりにしたその旅は、青年エルネストの人生観を確実に変えるものとなる…。

エルネスト・ゲバラ・デ・ラ・セルナ。後のチェ・ゲバラの青春時代を描いたこの作品は、彼の著書「チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記」が原作だ。チェ・ゲバラといえば、軍用ベレーをかぶった姿がお馴染み。世界的に有名な革命家の若き日々を描くロード・ムービーは、新鮮で純粋な青春映画だ。

私たちは、後にキューバ革命の闘士となり世界中の革命に影響を与えるゲバラの運命を、その死も含めて既に知っているのだが、ここでは彼の革命家としての姿はいっさい描かれない。ゲバラの一番有名な部分をバッサリ切り捨てることで、この映画は潔い伝記映画となっていて、無名の一青年の瑞々しさが映し出されていると思う。特別なヒーローではなく、他の人よりも少しだけ熱い心を持った無鉄砲な青年に、誰もが等身大の親しみを覚えるだろう。

革命を愛という言葉で解釈した彼の原点が垣間見えるようなエピソードが続くが、同時にゲバラの複雑な魅力も感じられる。十人十色と俗に言うが、この人の場合“一人十色”とでも言おうか。ハンセン病の治療に情熱を注ぎ、自分のための最後の薬を瀕死の老婆に与えるのも彼なら、後に反革命分子を何百人も処刑するのも同じ彼だ。厳しくも美しい南米大陸の大自然の中で見た、ラテン民族特有の陽気な気質と厳然として存在する階級差。ゲバラ個人と南米の持つ複雑さが重なって見える。この旅のインパクトは、青年エルネストの中に革命家チェ・ゲバラを静かに芽生えさせた。

製作はロバート・レッドフォード。政治的になりがちな人物を繊細に処理し、魅力ある映画を誕生させた。W.サレスを監督に選ぶ識別眼にも感心させられる。旅はしばしば人間を変えるが、ゲバラという革命家の誕生のきっかけが旅だったのは興味深い。世界が変わる日を夢見て革命に身を投じた“永久的な”革命家ゲバラは、生涯、留まることを知らない人生をおくった。魅力的な旅は同じ場所にいることを決して許さないのだ。

□2003年 イギリス・アメリカ合作映画  原題「THE MOTORCYCLE DIARIES」
□監督:ウォルター・サレス
□出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、ロドリゴ・デ・ラ・セルナ、ミア・マエストロ、他

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