2006年12月09日

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2046
◆プチレビュー◆

数字を含んだタイトルというのは実にソソられる。名手C.ドイルのカメラも相変わらず冴えている。ぜひ「花様年華」を見てから鑑賞を。

1967年の香港。作家のチャウは過去の恋人が忘れられず、刹那的な生活を送っている。ある日、日本人の恋人と別れて傷ついた女性に出会い、二人をモデルにした恋愛小説「2046」を書き始める。物語は2046年の近未来を舞台にし、主人公はチャウの分身とも言うべき、愛を探す男だった…。

この映画をSFと位置付けるのはちょっと早計だ。殆どの舞台は60年代の香港で、未来的な要素よりノスタルジックな雰囲気が濃い。小説家である男は昔愛した女を忘れられず、煮え切らない。そんな彼の脇を様々な女たちがすり抜けてゆく。そう、これは「花様年華」の後日談なのだ。カーウァイ作品とチャン・イーモウ作品の常連俳優たちの連合軍に、キムタクが居心地悪そうに混じっている。

日本版、カンヌ版と騒がれ、キムタクの出番の分量が話題になっているが、そんなことは重要ではない。そもそもトニー・レオンやコン・リーのようなカリスマ俳優の横でキムタクの存在など刺身のツマのようなものじゃないか。これで世界進出と言えるのか?!但し、世間で言われている、彼が日本語しか話さない設定は、さしてマイナスにはならない。なぜなら、この映画、我々には全て同じに聞こえるがみんなバラバラの言語を話しているからだ。北京語、広東語、日本語。異なる言語を映画の中でミックスさせる試みは初めてではないが、カーウァイの感覚の鋭さを感じさせる。

問題は、人気女優陣の出演配分だ。編集段階で全ての女優に気を遣ったのか、まるでメリハリがない。カジノでのエピソードなどぐっと短い方がよほど効果的だ。何しろ出るのはコン・リーである。例え一瞬でも観客の記憶に焼きつくはずなのに。

色々とケチを付けているが、実は私はこの映画、世間の低評価にもかかわらず、かなり気に入っている。その理由の大部分が「花様年華」が好きだからという単純なもので、お恥ずかしいが、音楽の効果も大きかった。カーウァイは俗にサウンド派と呼ばれるほど音楽センスがいいのだ。ちんたらちんたらしたストーリーに、けだるいメロディがリフレインし、映像は隙あらばスローになる。観客の脳は一種のマヒ状態で、それがすこぶる快感に。“酔う”とはこういう状態を言うのだ。今回はお得意のラテン系ムードミュージックにオペラのアリア。実に私好みなのであった。

音と映像に過去の記憶が混じりあう、映画という総合芸術のキモの部分がこの映画にはある。もっとも、そのような小賢しい理屈を乗り越えて“好み”という個人的な部分にストレートに訴えかけてくるのが映画が持つ底力なのだろう。

□2004年 香港映画  原題「2046」
監督:ウォン・カーウァイ
□出演:トニー・レオン、チャン・ツィイー、コン・リー、木村拓哉、フェイ・ウォン、カリーナ・ラウ、他

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