コラテラル スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]コラテラル スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
J.フォックスが南の島の絵葉書を渡す場面が泣かせる。技術面ではデジタル・ハイビジョンでの撮影が夜の場面に効果を発揮している。

夜のロサンゼルス。タクシー運転手マックスが乗せた一人の客はヴィンセントと名乗り、大金でマックスを専用運転手として一晩雇う。ヴィンセントは実はプロの殺し屋で、その夜のうちに、5人の人物を殺す仕事を請け負っていた…。

いわゆる巻き込まれ型サスペンスだが、この物語は主人公と犯人の距離が異常に近いのが特徴だ。何しろ一晩一緒に車中で過ごすことになるのだから。タイトルのコラテラルとは巻きぞえの意味。本作での不運な犠牲者は、平凡なタクシー運転手だ。

そもそもこの物語、最初から設定に無理がある。ヴィンセントは完全主義でプロの殺し屋だ。プロの仕事には普通プロの、つまり裏社会のドライバーを雇うもの。いきあたりばったりなど、ありえない。さらに殺人現場をマックスに目撃されたなら、彼を殺して次のタクシーに乗れば話は早い。しかし殺し屋はそうしないのだ。これは二人の男が運命的に結ばれてしまった話と解釈できる。彼らは無意識にお互いを必要とした。単純な犯罪劇ではないのだ。

初の悪役であるトム・クルーズは確かに頑張っている。厳密に言うと「タップス」で不良を演じ、「インタビュー・ウィズ・バンパイア」で冷徹な吸血鬼を演じているので“初の”とは言えないのだが。しかし、本作でも彼のスターのオーラは凄かった。役になりきる俳優が演技派と呼ばれる今の時代に、いつでもどこでもトム・クルーズであることはむしろ素晴らしいことではないか。比較するのは気がとがめるが、かつてG.クーパーやC.グランドがそうだった。トムはどこを切ってもクルーズなのだ。まるで、金太郎飴のようなヤツ…。彼こそ最後の“ハリウッド・スター”である!

監督のM.マンは骨太な男のドラマが大のお得意だ。さらに凝った映像で知られ、本作でも随所にスタイリッシュな映像美が光っている。冒頭に登場する夜のLAを俯瞰で捕らえたショットは、素晴らしい。映画の中によく登場するLAの街だが、美しいと感じたのは初めてだった。

恋愛要素が皆無のこの映画の中で、車中での、検事のアニーとマックスとの会話はひとときのやすらぎの時。実はこの出会いは後に効いてくる。殺し屋のヴィンセントにとっても、タクシー・ドライバーのマックスにとっても、人生と自分自身を見つめる決定的な夜の幕が開く。その幕はどんな形で降りるのか。最近、続編やリメイクばかりで退屈していたが、なかなか骨のあるオリジナル脚本だ。ハード・ボイルドタッチのサスペンスだが、心理劇として楽しめる。

□2004年 アメリカ映画  原題「COLLATERAL」
□監督:マイケル・マン
□出演:トム・クルーズ、ジェイミー・フォックス、ジェイダ・ピンケット・スミス、他

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