らくだの涙 [DVD]らくだの涙 [DVD]
◆プチレビュー◆
地味だが秀作のドキュメンタリー映画。一種の音楽映画と考えても興味深い。劇中で歌われる音楽には歌詞はなく、動物によって異なるひとつの言葉を繰りかえすもの。ちなみにらくだはHOOSだそう。

広大なモンゴルの大自然。春はらくだの出産の季節だ。若い母らくだが白い子らくだを産み落とすが、難産の苦しみのショックからか、母らくだは子育てを放棄してしまう。このままでは子らくだは死んでしまうかもしれないと心配した遊牧民族の大家族一家は、遠い町から音楽家を呼んでくるのだが…。

ミュンヘン映像映画学校を優秀な成績で卒業した、モンゴル人とイタリア人の二人の監督が共同で作った癒しのドキュメンタリー映画だ。4世代同居の大家族を周囲に見つけるのは難しいが、子育て放棄を含む幼児虐待は、珍しいことではない。母らくだは、子らくだを蹴ったり、噛みついたりするのに、子らくだはそんな目に遭いながらも母らくだを慕って哀しい声を上げる。「何とかせねば…」とスクリーンをみつめながら、思わずリキむ。

自分が産み落とした子らくだに愛情を持つことができない母らくだのために、一家が連れてきたのは、馬頭琴の演奏家だった。音楽によって母らくだの心を癒す“伝説の演奏療法”だ。らくだセラピー。いたって大真面目である。家族全員で見守る。私たち観客も一緒に見守る。そこに奇跡が訪れる。素朴で素直な感動がとてもいい。

らくだの母子が主役なのだが、同時に描かれる遊牧一家のあたたかな暮らしが魅力的だ。音楽家を呼びに幼い兄弟が町におつかいにいく様子は、ドキドキもの。テレビやゲームに夢中になりながらも、なんとか“任務”をこなす姿に、思わずガッツポーズだ。らくだは遊牧民にとって、貴重な財産であると同時に、大切な家族でもある。らくだの異変を見ても、彼らは決してうろたえたりはしないのだが、母らくだの心を癒すという行為は真剣そのものだ。

ドキュメンタリーなのだが、きちんとしたストーリーがあり、映画としての骨組みの確かさを感じさせてくれた。自然破壊が世界レベルで進んでいる今、このような映像を見ておくことはとても貴重な体験に思える。自然と伝統が共存する世界は威厳に満ちていた。愛情の喪失と再生の珠玉の一篇で、私は大いに気に入っている。

□2003年 ドイツ映画  英語原題「The Story of Weeping Camel」
□監督:ビャンバスレン・ダバー、ルイジ・ファロルニ
□出演:オーガンバータル・イフバヤル、オドゲレル・アユーシ、母らくだ、子らくだ、他

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