パッチギ! (特別価格版) [DVD]パッチギ! (特別価格版) [DVD]
◆プチレビュー◆
ケンカ、出産、友の死…。様々なエピソードが重なるラストにかぶる「イムジン河」の熱唱には、思わず号泣。オダギリ・ジョーの壊れた姿が笑える。

1968年の京都。府立東高校の康介は、朝鮮高校に通う美少女キョンジャに一目惚れ。フルートを吹く彼女が演奏していた「イムジン河」という曲を知り、ギターを買って音楽をはじめる。キョンジャの兄で朝鮮高校の番長のアンソンや周囲の人々とも知り合うが、日本人と朝鮮人の間のトラブルは絶えなかった…。

井筒監督の作品に音楽は欠かせない。そして自らのホーム・グラウンドである関西の空気。監督自身が青春をおくった60年代は、関西のみならず、日本や世界が熱く燃えたぎっていた時代なのだ。世界中が権力に対し“意義申し立て”を叫んでいた時代。「イムジン河」はそんな中で生まれた名曲だ。

タイトルの“パッチギ”とは、突き破る、乗り越えるという意味のハングル。頭突きの意味もある。京都を舞台に、日本人と在日朝鮮人の高校生どうしがケンカに明け暮れる中、出会った男女が恋に落ちる物語は「ロミオとジュリエット」のよう。だが、単なる恋愛物語ではなく、政治や歴史、青春時代特有の熱い気持ちが物語の底辺に流れている。権力側が歌うことを禁じた歌を口にするのは、障害を乗り越え、自らの生き方に根性を据えることだ。

争いの中で若者が命を落とす。通夜の席で老人が、日本での在日朝鮮人としての苦しみを吐露する場面が胸を打つが、そういう歴史の痛みを教えてくれる映画が存在することに感謝する気持ちが強かった。「イムジン河」はもちろん「悲しくてやりきれない」などの当時の名曲の歌詞が、物語と見事にシンクロし、観客の感動を誘う。井筒節とも言える、ユーモアや若者たちへのあたたかい視線も健在だ。

ロミオとジュリエットは悲劇で終わるが、康介とキョンジャの物語のラストには確かな希望の光がある。38度線を流れる河は朝鮮半島を分断するだけでなく、日本人と在日朝鮮人の間にも横たわるのだ。しかし、時を経て“イムジン河”が歌える日がやってきたように、その河を渡って出会える日は必ずやって来る。

□2004年 日本映画
□監督:井筒和幸
□出演:塩谷瞬、江尻エリカ、高岡蒼佑、他

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