アレキサンダー 通常版 [DVD]アレキサンダー 通常版 [DVD]
◆プチレビュー◆
一人の人物を真摯に描いているのにますます霧の中…という印象は「ニクソン」を見たときも感じたものだった。美しいバビロン入場のシーンが、アメリカ軍の中東入りに見えてしまうのが、時世の悲しさか。

謎に包まれたマケドニアの王アレキサンダー。史上最大の帝国を築いた若き王は、利己的な父や、息子を支配する母との葛藤に苦しみながら育った。わずか20歳で王になった彼は、世界を統一するという大きな夢を追い続けて、遠くアジアの果てまでも旅を続けるが…。

本作の主人公アレキサンダーは、歴史の教科書にも登場する有名人物。実在ながら伝説の英雄アキレスの子孫であると全編に暗示がある。舞台は神話の世界と同じくらい遠い昔だ。記録が少ない人物を描写するのは、逆に言えば自由に構築できるということ。だが、この作品では“結局、彼のことはよくわかりませんでした”と言われているようで何とも釈然としない。

難点は、狂言回しを務めるアンソニー・ホプキンスが映画の中で浮いてしまったことだ。大王の部下で後のエジプト王プトレマイオスが王の生涯を記録するという形で物語が進行するが、老プトレマイオスに戻るたびに話が中断され、違和感を感じてしまう。おかげで映画を見終わった後に記憶に残るのが、マザコンと同性愛嗜好ばかりなのだ。

評価すべきはアンジェリーナ・ジョリーで、息子を支配しようとする母親を、妖気と愛情に溢れる演技で熱演。このキャラは見ようによってはかなり笑えるシロモノで、注目だ。ペルシャ軍を打ち破った戦闘場面やインドでの象を使った戦いは、監督得意の凄惨な戦争映画のノリで見応えがある。だが、肝心の主人公の人物造形に深みがない。アレキサンダーが本気で信じた民族融合による平和な世界は、今の世の中では、原理主義という形でしかお目にかかれないのだ。ならば、伝説の英雄は魅力溢れる人物であってほしいし、そうでなくては映画の主人公は務まらない。

オリバー・ストーンがライフワークとしてベトナム戦争を描き続け、映画でアメリカの過ちを検証していることは自他ともに認めるところ。この人の演出手腕は、やはりアメリカ現代史において最も冴える。素材と調理法の両方を誤ってしまった、料理人の一皿を食すような映画だった。しかも、本当は腕がいいことを誰もが知っているだけに、大いに悔やまれる。

□2004年 アメリカ映画  原題「ALEXANDER」
□監督:オリバー・ストーン
□出演:コリン・ファレル、アンジェリーナ・ジョリー、ヴァル・キルマー、他

人気ブログランキング用バナー

←この記事が気に入ったら、ポチッとクリックしてもらえると嬉しいです\(^o^)/