クレールの刺繍 [DVD]クレールの刺繍 [DVD]
◆プチレビュー◆
地味だがしっとりとした、実に味のある映画だ。クレールが作る刺繍は、ビーズやスパンコールだけでなく、毛皮やチェーンなども使われていて、独自のセンスが感じられる。

17歳のクレールは妊娠したことを親にも告げられない。妊娠は彼女が望むものではなかったので、フランス特有の「匿名出産」を選択する。孤独な暮らしの中で、ただ一つの生きがいである刺繍を続けたいクレールは、事故で息子を亡くしたばかりの刺繍職人のメリキアン夫人のアトリエで働くことになるが…。

舞台はフランスの片田舎。冒頭のシーンは畑でキャベツ泥棒をする場面。極めて地味な作品であることが最初から判る。だが、言いようもなく美しい映画だった。傷ついた女性たちの再生のドラマという、さして目新しくもない題材を、不思議と心に染みる物語に変えたのは、絵画のように深みがある映像だ。

セリフは極力控えめ。それは登場人物2人の性格にもよるものだが、職人特有の根気強さや誇り高さは、沈黙の中でにじみ出るものだ。命を授かったクレールと命を失ったメリキアン夫人に共通項はほとんどない。二人は刺繍を通してのみ理解を深める。一針、一針と、観客の心にも輝きを届けてくれる。

フランス特有の制度で、通称「マドモアゼル・エックスの出産」と呼ばれる「匿名出産」。母親の身元を伏せたまま、産後すぐに養子に出す制度だ。命を授かったことの意味を理解できなかった幼いクレールの表情は、最後に安らかな微笑みに変わる。彼女に「生」の意味と、他者と心を通わす喜びを教えたのは、刺繍だったのだ。

□2004年 フランス映画 仏語原題「Brodeuses」
□監督:エレオノール・フォーシェ
□出演:ローラ・ネマルク、アリアンヌ・アスカリッド、他

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