そして、ひと粒のひかり [DVD]そして、ひと粒のひかり [DVD]
◆プチレビュー◆
生活のためとはいえ、安易に麻薬に走る姿は激しく苛立ちを誘う。南米諸国は生活の末端まで米国の支配を受ける。だが、その米国に入り込みたくましく生き抜くのもまた巧妙な支配なのだ。

田舎町での貧困と閉塞感に苦しみ、さらに望まない妊娠が発覚してから、衝動的に麻薬の運び屋となった17歳のマリア。麻薬を胃の中に飲み込んで密輸する、極めて危険なこの仕事は、ドラッグ・ミュールと呼ばれていた。5000ドルという想像もつかない大金を提示され、ついに彼女は62粒の麻薬を飲み込んでNY行の飛行機に乗るが…。

麻薬を扱った映画というので、重苦しい社会派ドラマを予想していたが、この作品は少し違う。確かにコロンビアの麻薬問題は日本とは比べ物にならないほど深刻で、危険なものだ。だが物語は一人の少女の心の成長に重点を置いて進んでいく。大人でも子供でもない17歳という微妙な年齢の女性の物語は、普遍的なもので、日本人でもきっと共感する部分があるはずだ。

なんとか無事に税関を通過しNYへたどり着いた彼女だったが恐ろしい出来事を目の当たりにして、麻薬を持ったまま逃げ出してしまう。このあたりはサスペンス風に展開するが、ハリウッド映画のようにアクション寄りの展開には決してならない。言葉も通じぬ異国の地で、わずかなつてだけを頼りに奔走するマリアの姿。ここに見える明確な「生きる意思」。主人公の内面は、ここから変わっていく。

ヒロインのマリアを演じるカタリーナ・サンディノ・モレノは、本作でアカデミー主演女優賞にノミネートされた。見れば納得の名演技で、将来が期待される逸材だと確信する。特に、ラストの表情は印象的で忘れられない。セリフはなくとも表情だけでマリアが希望を胸に人生の再出発を歩むことが伝わってくる。体内に宿った小さな命の尊さに気付いたとき、まさに彼女は21世紀のマリアになった。

□2004年 コロンビア・アメリカ合作映画 原題「MARIA FULL OF GRACE」
□監督:ジョシュア・マーストン
□出演:カタリーナ・サンディノ・モレノ、イェニー・パオラ・ヴェガ、オーランド・トーボン、他

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