ミュンヘン スペシャル・エディション【2枚組】 [DVD]ミュンヘン スペシャル・エディション【2枚組】 [DVD]
◆プチレビュー◆
記録映画やTV映画にもなった手垢のついた事件をいまなぜ映画化なのか?ラストの世界貿易センターの映像は、あまりにも“読める”演出で苦笑。いっそ得意のSFにでもして、未来のイスラエルをシュミレーションするくらいの心意気をみせてほしかった。

1972年ミュンヘン・オリンピック開催中に、パレスチナ・ゲリラによるイスラエル選手団襲撃事件が勃発。これに激怒したイスラエル側は、事件後ひそかに暗殺チームを編成し、報復を企てる。愛国心の強いアヴナーはこのチームのリーダーに任命されるが、任務を遂行するうちに彼の心に恐怖と疑問が沸き起こる…。

物語の軸は、選手団襲撃事件の後の、長い時間と膨大な経費をかけた殺人計画。雇い主はイスラエル国家だ。複雑な政治と歴史がからむ話なので、できれば72年の五輪の前からの中東情勢を予習して見ると、テロと報復の悪循環をより深く理解できる。

妻や子どもを愛し料理が大好きという細やかな面を見せるアヴナー。彼を人間的な好人物にすることで、報復行為のむなしさと極限の緊張からくる心の強迫が際立った。また、爆弾テロによる流血沙汰は、スピルバーグらしく生々しいまでのリアリズム。銃弾の数までも綿密にリサーチして作り上げたというからすごい。この映画にかける意気込みが伝わってくるようだ。

映画のメッセージは、平和の尊さを訴える真面目で素晴らしいものだ。暴力に暴力で応えても殺し合いは永遠に続き、決して平和などない。同じ人間同士、もっと歩み寄ろう。大いに賛成だ。しかし、事件から30年以上たった今もテロの連鎖が止まない現実は世界中が知っている。もつれにもつれた中東情勢は「きれいごと」では解決できないところまできているのではないのか。それを知っているはずのユダヤ人スピルバーグが描く映画なら、もっと違う、驚くような答えがほしかった。私たち観客は、スピルバーグにはより高いレベルのものをいつも要求してしまう。なぜなら、彼にはそれを映像化できる実力も経済力もあるのだから。

□2005年 アメリカ映画 原題「Munich」
□監督:スティーヴン・スピルバーグ
□出演:エリック・バナ、ダニエル・クレイグ、ジェフリー・ラッシュ、他

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