輝く夜明けに向かって [DVD]輝く夜明けに向かって [DVD]
◆プチレビュー◆
人種差別によりテロリストを生む構造と、自由のためにテロリストになる人間。世界の暴力行為の根は複雑で深い。解決策より不安感をあおる映画だと思う。 【50点】

1980年代の南アフリカ。そこでは、少数の白人による過酷なアパルトヘイト(人種隔離政策)が大多数の黒人たちの尊厳を奪っていた。パトリックは黒人としては豊かな暮らしの中で平穏に生きていたが、ある日、テロ対策班の大佐ニックから、工場爆破事件の犯人として無実の罪をきせられる…。

近年、アフリカを舞台にした映画が多い。もちろん昔からあるが、貧困、飢餓、内戦、環境破壊と止まるところを知らないアフリカの社会問題の源に、欧米が明らかに荷担していることを知らしめるため、映画人が声をあげているのだ。南アのアパルトヘイトは、現在は終結しているが、世界の人種差別問題に終わりは見えない。

無実の罪から、自分や家族が拷問されたことが、平穏な人生を送っていたパトリックを激変させる。彼は自由を勝ち取るために、急進派組織のアフリカ民族会議に身を投じた。政府側から見れば「テロリスト」、民衆側からは「自由の戦士」。この二つは紙一重なのだ。主人公を英雄として扱うのではなく、矛盾をはらみ欠点を持つ人間として描いたことが、テロ行為と自由の戦いの境界線の複雑さと重なって上手かった。

テロ対策班のニック・フォスを演じたティム・ロビンスは、実際はリベラル派として知られる俳優だ。この冷酷な役は、さぞ抵抗があったに違いない。だがそこは実力派俳優。人種差別を祖国の崩壊の阻止と考える誤った愛国者として、奥深く演じている。ニックのやり方は明らかに間違っている。だが彼は、アパルトヘイト政策の限界とその終焉を心の中で悟っていた。ニック・フォスという怪物は、あきらめを内包しながら職務を全うし、そして滅びていく男なのだ。「祖国と自由のために戦う」という大義名分の、多面的な恐ろしさを見せられる作品である。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)社会派度:★★★★☆

□2006年 アメリカ・フランス合作映画 原題「Catch a Fire」
□監督:フィリップ・ノイス
□出演:ティム・ロビンス、デレク・ルーク、ボニー・ヘナ、他

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