善き人のためのソナタ スタンダード・エディション [DVD]善き人のためのソナタ スタンダード・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
ドイツ史の暗部のシュタージをようやく映画化できる日がやってきた。地味でつらい話だが、最後の最後にすてきなプレゼントが用意されている。 【90点】

旧東ドイツに存在した強大な監視システム、シュタージ(国家保安局)。国民の思想統制と監視を目的にしたシュタージの忠実な役人ヴィースラー大尉は、劇作家ドライマンに目を付け、彼の私生活の一部始終の盗聴を始める。しかし、作家の生活を深く知ることで、彼に変化が生じてしまう…。

ハゲている。地味である。おまけにトンデモナイ仕事をやっている。そんなおやじが主人公なのに、見終わればこの涼やかな感動は何だろう。まるで美しい一篇の詩を読んだ後のようなこの気持ちを何と呼ぼう。非情な組織シュタージは、隣人や恋人、家族までも密告者にする。主人公のヴィースラーは、作家の生活を垣間見ることで、国家への懐疑や自由へのあこがれを覚える。さらに、自分のみじめな人生に気付き、はからずも人間性に目覚めてしまうのだ。愛のある暮らしとブレヒトを知り、美しい音楽を聴いた時、ヴィースラーはドライマンの守護天使になると心に決めた。

人間的に生きる。そんな当たり前のことが禁止されていた時代を持つ国は、不幸だ。だが、その暗部を自ら語り、世に問う行為は、勇気が必要なことで、それが出来ればつらい記憶は乗り越えられる。新人監督によるこの映画は、実際に監視された経験を持つ俳優ミューエを使うことで作品にリアリティが生まれている。物語は、作家を守り通した主人公に、ベルリンの壁崩壊後、出世とは無縁の孤独な人生を与えつつ、粋な贈り物を用意した。自分を守ってくれた人間の存在を知り、驚いたドライマン。彼は、ヴィースラー本人に直接お礼の言葉を述べる代わりに、ある方法で感謝を伝える。この場面を見るだけでも映画を見る価値がある。

邦題は、劇中で主人公が聴く美しい曲のタイトルだ。芸術活動を禁じられ、自殺した演出家がドライマンに贈った楽譜には「この曲を本気で聴いた者は、悪人にはなれない」という言葉が添えられた。その“予言”は正しく当たる。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)知っておくべき度:★★★★☆

□2006年 ドイツ映画 
□独語原題「DAS LEBEN DER ANDERENREAMGIRLS(あちら側の人々の生活)」
□監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
□出演:ウルリッヒ・ミューエ、マルティナ・ゲデック、セバスチャン・コッホ、他

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