今宵、フィッツジェラルド劇場で [DVD]今宵、フィッツジェラルド劇場で [DVD]
◆プチレビュー◆
アルトマン監督の遺作は豪華キャストの群像劇。出演者たちが見事な歌声を披露する。長年のファンも、アルトマン入門者にも、おすすめ。 【75点】

ミネソタ州のフィッツジェラルド劇場で、長い間、全米で親しまれてきたラジオ番組が、最後の公開生放送を迎えようとしていた。次々に楽屋入りするカントリー・シンガーたち。そんな中、白いトレンチ・コートの美女が姿を現す。番組はいつもと同じようにスタートしたが…。

米国を代表する鬼才監督のロバート・アルトマン。彼の遺作になったこの作品は、名作「ナッシュビル」を思わせる、音楽系の群像劇だ。30年以上続いたラジオの公開番組「プレイリー・ホーム・コンパニオン」の舞台裏では、たくさんの人々の思いが行き交う。カントリー音楽という保守的なアイテムを使いながら、その終焉の一場面を演出し、さらに、下ネタの歌詞まで歌い合う、陽気でシニカルな批判精神。これぞ反骨のアルトマン節だ。

物語全体を覆うのは、滅びゆくものへの優しいまなざし。終わってしまうラジオ番組、舞台裏で人生を終えるベテラン歌手、死の天使が登場し、遂には監督自身が逝くというから、展開が完璧すぎる。私たちが改めて巨匠の偉大さを知る頃には、彼はもういない。アルトマンとはなんて粋な男だろう!

観客は、必ずキャラクターの誰かに自分を重ねて感情移入し、バラバラに見えたエピソードに、深い人間ドラマを見るはずだ。多くの登場人物を巧みに操る群像劇の傑作は、凡人には作れない。だが、アルトマンの継承者は確かに存在する。この映画で、高齢の監督を陰で支えたポール・トーマス・アンダーソンはその筆頭と言っていい。本作をラスト・メッセージに逝ってしまった名匠アルトマン。彼の作品はこれが最後かと思うと、本当に寂しい。“さようなら”ではなく“ありがとう”と言ってお別れしよう。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)陽気なお別れ度:★★★★☆

□2006年 アメリカ映画 原題「A Prairie Home Companion」
□監督:ロバート・アルトマン
□出演:ウディ・ハレルソン、トミー・リー・ジョーンズ、メリル・ストリープ、他

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