バベル [Blu-ray]バベル [Blu-ray]
◆プチレビュー◆
1発の銃声の波紋が4大陸を駆け巡る。コミュニケーション不能の世界での絶望と希望を描く秀作ドラマ。菊地凛子の熱演にも注目。 【90点】

夫婦の絆を確かめるためモロッコにやってきた米国人夫婦の妻が撃たれる。モロッコ人の少年が遊び半分に撃った一発の銃弾は、メキシコ、そして日本へと波紋を広げていく。言葉が通じないために起こる様々なトラブルの中で、登場人物たちは孤独を味わうが…。

風が吹けば桶屋が儲かる。この表現を例えに出すのは気が引けるのだが、本作の物語展開はまさにそんな感じなのだ。モロッコで家畜の世話をする少年が腕だめしにと撃ったライフルの銃弾が、米国人女性に当たってしまうのが発端だ。言葉が通じず、果ては外交問題に発展する。一方で夫妻が雇うメキシコ人家政婦は、甥っ子のラテンのノリのいいかげんさが災いし、国境でトラブルに。夫妻の子どもを連れていたため、逮捕、強制送還へと追い込まれる。そもそもこの銃は、モロッコに観光にきた日本人が、親切なガイドに“感謝の印として”プレゼントしたものなのだ。日本人が無責任に置いてきた銃が、アラブ世界の少年を犯罪者にし、ラテン系の中年女性の生活を奪う。そんな理不尽とは対局に、聴覚障害者の日本人の少女の悩みは、誰かに強く愛されたいというものだ。日本特有の中身のない風俗と好奇心の中で漂う思春期の少女は、耳が聞こえないことは別にしてめぐまれているように思えるが、実は彼女のこの孤独感こそ、世界共通の傷みなのだと映画は訴える。

世界中に星の数ほど存在する人間同士のほとんどは、一生知り合うこともなく終わる。だが、存在さえ知らない人とも、私たちはどこかでつながっていて、影響しあっているのだ。今、誰かを幸せにする出来事が、悲惨な不幸に続く道にもなる。幸福を味わっている人の笑顔の影で泣く人もいよう。私たちが普段意識せずに暮らしているそんなつながりを、この映画は思い起こさせてくれる。

異なった複数のエピソードがやがてひとつに収束していくスタイルは、イニャリトゥ監督の得意とするところ。監督一作目の「アモーレス・ペロス」から、世界中で認められたその才能は本物だ。本作はそんな彼のひとつの到達点だと思う。人と人が分かりあう難しさを実感すると同時に、ラストに娘をそっと抱きしめる父親の姿に、かすかな希望が見える。夜の東京の高層ビルこそ、現代のバベルの塔に見えた。感動が心にしみる。

 (シネマッシモ評価:★5つが満点)日本大注目度:★★★★☆

□2006年 アメリカ映画 原題「BABEL」
□監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
□出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、菊地凛子、他


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