ツォツィ プレミアム・エディション(2枚組) [DVD]ツォツィ プレミアム・エディション(2枚組) [DVD]
◆プチレビュー◆
命の大切さを知るにはこんな映画を見るといい。黒人同士の間でもシビアな格差が存在する南アの現状がリアル。希望と誇りを感じるラストに思わず涙した。 【90点】

南アフリカ共和国、ヨハネスブルグ。スラムで生まれ育ったツォツィは、仲間とつるんで窃盗や強盗、時には殺人を繰り返し、未来のない日々を送っていた。ある日、裕福な女性を銃で襲い高級車を奪うが、車内には生まれたばかりの赤ん坊がいた。迷った末に彼はその赤ん坊を家に連れ帰る…。

映画には「赤ちゃんもの」というジャンルがある。遊び人の男性が家庭のあたたかさを知ったり、キャリアウーマンが自然体で人生を謳歌したりと、主人公が自分を見つめて再生するのが特徴だ。幼な子の無防備な存在は、人間を根底から変える力があるらしい。そんな赤ちゃんものの超辛口バージョンが本作だ。ツォツィは、無垢な赤ん坊と向き合うことで命の尊さを学ぶことになる。そして彼は確かに変わる。セオリー通りの展開ながら、格差社会の底辺にいる若者の心の変化を丁寧に描いて、南アの現状までも浮き彫りにする手法が上手い。

ツォツィとは、不良、チンピラを意味する南アのスラング。主人公は、生まれも育ちも名前さえも封印して生きるほど、人生に希望が見出せない少年なのだ。愛を注いでもらったことのない彼は、命の重みなど知らない。それを教えるのがまだ言葉さえ話せない赤ん坊というところに意味がある。愛されることと同じくらい、愛する対象を持つことが人間にとってどんなに大事なことか。そのことを体現する2人の女性が物語に登場する。赤ん坊に母乳を飲ませる貧しくて若い母親と、車椅子姿でツォツィと正面から向き合う赤ん坊の実の母だ。立場は違うが、2人の女性の威厳ある姿は共に強く美しい。

南アのアパルトヘイトは過去のものとなったが、政治腐敗や差別意識がなくなったわけではないことが、映画に明白に映り込んでいる。特に、黒人同士で歴然とした経済格差が存在する皮肉。そのシワ寄せは若い世代にのしかかった。最も印象的なのは、ツォツィが夕暮れの空き地で、かつて自分が住んでいた土管を眺める場面だ。ビジュアルのセンスの良さと、ワン・シークエンスで主人公の背景を説明する説得力。まっとうに生きたいと願うツォツィの思いが伝わり、監督の演出の力量を感じさせた。この切ないシーンがあるから、ラストの彼の行動に納得がいく。見る人によっては甘くも映るツォツィの選択は、私には、非常に鋭い生命の光に見えた。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)15歳未満こそ必見度:★★★★★

□2005年 イギリス・南アフリカ合作映画 原題「TSUOTSI」
□監督:ギャヴィン・フッド
□出演:プレスリー・チュエニヤハエ、ZOLA、テリー・ペート、他
□2006年アカデミー賞外国語映画賞受賞

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