2007年06月30日

映画レビュー「ボルベール<帰郷>」

ボルベール<帰郷> コレクターズ・エディション
◆プチレビュー◆
殺人や幽霊などがさらりと登場するが、主題は女が生きるということ。笑いと涙、驚きの秘密とは?ペネロペが最も輝くのは、やはりスペイン映画だ。 【85点】

ライムンダは失業中の夫の代わりに働く気丈な女性。ある日、義理の娘パウラに乱暴しようとした夫を、誤って娘が殺してしまう。殺人を隠し娘をかばうライムンダ。そんな時、彼女は、ある理由から拒み続けた亡き母の噂を聞く。それは、遠い昔に焼死した母イレネの幽霊が現れるという奇妙なものだった…。

男性の影が極めて薄い、徹底した女性映画だ。女たち、とりわけ母の力強さが物語をグイグイ引っ張る。この映画には6人の主要女性キャラが登場するが、彼女たちは皆、たくましくてセクシーだ。中心はライムンダとその母イレネ。映画冒頭の、強風の中で墓を掃除する場面が、女たちの人生の過酷さを物語る。舞台は、ドンキホーテゆかりの場所で、迷信深いラ・マンチャ地方だ。ここでは、幽霊が現れるのはよくあることらしい。

アルモドバルの故郷であるラ・マンチャの精神風土は、生者と死者が共存するおおらかなものだ。幽霊が出てもなぜかみんながすんなり受け入れるようなおかし味は、アルモドバル映画の特徴でもある。悲しみの中に笑いが含まれ、上品さと下品さが仲良く同居。劇中で殺人も起こるが、悲壮感や罪深さは全くない。むしろ、冷凍庫に夫の死体を隠す手際の良さと、死体を隠したままレストランを買取りテキパキと営業してしまうライムンダの生活力の高さが目を引いた。ごちゃまぜのまま物事を受け入れて面倒を見てしまうこの感覚が、ラテンの懐の深さに思える。こんな国でなら、幽霊とだって仲直りできそうだ。

母、娘、孫。3世代の中心にいるライムンダは、母であると同時に娘である。だからこそ、ままならない人生も、たくましく生き抜き、喜びを見い出す術(すべ)を知っている。ライムンダの秘密と、もっと衝撃的な母の秘密は、極めて悲劇的なものだが、それすらも大きな生命力で収束してしまうのがアルモドバル流の人生賛歌だ。黒い瞳に気の強さをにじませながら、時折さびしげな表情を見せるペネロペ・クルスが絶品。ラ・マンチャ地方のたくましい女になるため、細身の彼女は“つけ尻”をして熱演している。劇中にライムンダが情感込めて歌う、タンゴの名曲「ボルベール」が、いつまでも心に残った。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)母は強し度:★★★★☆

□2006年 スペイン映画 スペイン語原題「VOLVER」
□監督:ペドロ・アルモドバル
□出演:ペネロペ・クルス、カルメン・マウラ、ロラ・ドゥエニャス、他

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13. 【ボルベール 】  [ +++ Candy Cinema +++ ]   2007年10月03日 01:31
【VOLVER】 監督・脚本  ペドロ・アルモドバル  製作年度 2006年  日本公開 2007年6月30日     上映時間 120分  製作国 スペイン  配給 ギャガ・コミュニケーションズ CAST ペネロペ・クルス/カル》
12. ボルベール<帰郷>  [ ☆彡映画鑑賞日記☆彡 ]   2007年09月30日 00:25
 『ママ、話したいことが ヤマほどあるの。』  コチラの「ボルベール<帰郷>」は、6/30に公開になる"巨匠アルモドバル監督の、原点にして最高傑作"であり、"故郷ラ・マンチャを舞台に、タンゴの名曲「VOLVER」にのせて贈る、哀しくも可笑しい女たちの人生賛歌――。"....
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妖艶な雰囲気がありながら、どこか少女っぽいライムンダを演じ、ペネロペはカンヌで最優秀女優賞を受賞。
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1. 映画「ボルベール <帰郷>」  [ 映画専用トラックバックセンター ]   2007年07月03日 22:33
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この記事へのコメント
1. Posted by ゴブリン    2008年01月08日 00:57
こんばんは。
先ほどは間違ったTBを送ってしまいました。大変失礼いたしました。申し訳ありません。
僕もこの映画の風土的な要素に注目しました。幽霊が出ても不思議はないという下地を作っておいて幽霊が出てくる、しかもそれがまたひっくり返されるという展開。サスペンス、ユーモアなどの要素もうまく盛り込まれて最後までぐいぐいひきつけられます。
昨年公開された作品の中でも上位に入れたい作品でした。
2. Posted by まちこ    2008年01月08日 23:03
ゴブリンさん、ようこそ。
「ボルベール」は素晴らしい映画でしたね。私も大好きです。
これがアカデミー賞の外国語映画賞のノミネートにももれたのは本当に不思議でした。
映画には幽霊ものっていうジャンルがあって、名作が結構あるんですが、アルモドバルはさすがに上手い。

また遊びにきてください。

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