デス・プルーフ プレミアム・エディション [DVD]デス・プルーフ プレミアム・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
タランティーノ印のB級ガールズ・ムービー。前半と後半の激しい転調に思わずクラクラする。65点】

テキサスの田舎町。女の子たちがバーに繰り出した。そこで、スタントマン・マイクという遊び人風の中年男と知り合うが、実はマイクは耐死仕様(デス・プルーフ)のシボレーで女性を殺す連続殺人鬼だった。それから14ヶ月後のテネシー。車を乗り回す女の子たちに目をつけたマイクだったが…。

グラインドハウスとは60〜70年代の米国でB級映画ばかりを2〜3本立てで上映していた劇場の総称だ。低予算映画の売りは暴力とアクション、エロにスプラッタ。タランティーノは、大物になった今もそんな映画を偏愛してやまない。日本では別々に公開されるR.ロドリゲス監督の「プラネット・テラーinグラインドハウス」と2本セットの扱いで、B級映画へオマージュを捧げるべくイベント・ムービーを企画した。綺麗なフィルムにわざと傷を付け、ノイズまで仕込んで当時のテイストを再現する念の入れようである。物語は殺人鬼vsガールズの戦いというシンプルなものだ。後半には、手に汗握るカーチェイスがたっぷり楽しめる。

タランティーノは、もともと個人趣味全開の映画人だ。「キル・ビル」の香港カンフー映画やマカロニ・ウェスタンのように、自分の愛するキッチュな素材をスタイリッシュに再構築する才能は並はずれて高い。たっぷりとお金をかけて“チープ”を作るなんて、さすがはハリウッドの若き巨匠である。本作ではめでたく撮影監督デビューも果たし、足フェチを堂々と披露するなど、やりたい放題だ。ネットリとエロいカメラワークにはやや辟易するが、これもまたB級テイストだろう。だが、この映画のキモは、長々と続くほとんど意味のないガーリー・トークにある。グラインドハウスの観客は、女の子たちがスラリとした素足を投げ出しながら、男の品定めをしたり開放的な恋愛観を語るのを、ポップコーンをほおばりながら楽しんでいたに違いない。映画は前半と後半で大きく転調し、女の子たちの顔ぶれもガラリと変わるが、女子トークは共通なのだ。おしゃべりには、車や映画などのコアな内容もあるが、観客はいい加減に頭がボンヤリしてくる。だがこれも計算のうち。ダラダラ・トークは突然終了し、美女の惨殺や、「バニシング・ポイント」ばりのカーアクションへと豹変するのだ。ボルテージは一気に跳ね上がる。ストーリーが飛躍してこそ、B級映画と言わんばかりだ。

ユマ・サーマンの女性スタント、ゾーイ・ベルが、命知らずの演技で挑む壮絶なカーチェイスは、全て本物だ。スター女優の影の存在の女性に光を当てるあたり、タランティーノの映画愛を感じてちょっと泣ける。そしてサイコな殺人鬼がピッタリはまっているカート・ラッセル。実に懐の深い役者である。女子トークから、突如、殺人話に転調しても、このキレっぷりなら文句はない。彼を追い詰めるカーチェイスは、突き抜けた笑いでいっぱいだ。残念なのは、この作品が往年のB級映画の再現に全力を注ぎすぎて、現代のテイストがほとんど感じられないことだろうか。“今の空気”はロドリゲス作品にまかせるとして、まずは、正調B級カーアクション映画をじっくりと味わってみよう。現代に蘇ったグラインドハウスのエキセントリックな空気。唐突にやってくる、壮快にしてバカらしいラスト。映画なんて所詮、いかがわしくて無責任なものなのかもしれないと、爆笑しながらしみじみ思ったものだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ガーリー度:★★★★☆

□2007年 アメリカ映画 原題「Quentin Tarantino's Death Proof」
□監督:クエンティン・タランティーノ
□出演:カート・ラッセル、ゾーイ・ベル、ロザリオ・ドーソン、他

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