厨房で逢いましょう [DVD]厨房で逢いましょう [DVD]
◆プチレビュー◆
風変わりなグルメ映画にして、ほろ苦い大人のラブ・ストーリー。エデンの園を連想させる原題が意味深だ。65点】

グレゴアは天才的な料理の腕を持つシェフだが、容姿のコンプレックスからか、人づきあいが苦手。そんな彼が平凡な主婦エデンに恋をした。エデンもまたグレゴアの料理の魅力の虜になるが、エデンの夫はそんな二人の様子を快く思わない…。

映画は視覚と聴覚を中心に味わうが、味覚や嗅覚を刺激する映画というものが確かにある。それがグルメものと呼ばれる、おいしい料理を描いた映画。劇中で、エロティック・キュイジーヌ(官能料理)と呼ばれる料理は、アート性が高く映像効果も抜群だ。少し変わった大人の恋の顛末を描くこの物語は、あたかもフルコースのごとく変化し、デザートのプラリネ付きチョコレートケーキのように、ビターな満足感を残す。

レストランで出される芸術的な料理の姿と対局にあるのが、冒頭に描かれる食材の下ごしらえのプロセス。鳥の毛をむしり、動物を逆さづりにして皮をはぐ。おいしくて美しい味はこんなグロテスクな作業を経て生まれているのだ。美食のためなら牛の睾丸だって料理する。料理には時に勇気も必要となる。意外性と過激さを含むこれらの料理の演出は、実は物語の伏線となっている。一見、ニブそうなシェフはすこぶる繊細だし、優しくて平凡な主婦は、グレゴアの恋心の空気が読めないからか、厚かましくも大胆な行動を取り続ける。鈍感なのか天真爛漫なのか判別不能の中年女性に振り回される男たちが哀れにさえ思えてしまうが、これが女の無意識の残酷さというものだ。彼女の名前が、エデンというのが何よりの証拠。その場所の住民は、いずれ追放される運命なのだ。物語では、リンゴの代わりにあるものが木から落ちて、予想もしない方向へと転がっていく。ハリウッド映画のような予定調和とは無縁の荒々しさに、ゲルマン魂という言葉が浮かんだ。

グレゴアの恋心はエデンに伝わるのか?エデンは微妙な関係の夫のもとへ帰るのか?顛末は映画を見てのお楽しみだが、ほろ苦くも優しい結末が待っている。楽しいだけのグルメ映画とはちょっと違う、味わい深いスパイスが効いた小品だ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)女は残酷度:★★★★☆

□2006年 ドイツ・スイス合作映画 原題「EDEN」
□監督:ミヒャエル・ホーフマン
□出演:ヨーゼフ・オステンドルフ、シャルロット・ロシュ、デヴィット・シュトリーゾフ、他

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