ミス・ポター (初回限定生産 特製パッケージ) [DVD]ミス・ポター (初回限定生産 特製パッケージ) [DVD]
◆プチレビュー◆
ピーターラビットの作者の半生を描く伝記。湖水地方の美しい風景に癒される。CGで動く動物たちが最高に可愛い。70点】

20世紀初頭のロンドン。上流階級の女性ビアトリクス・ポターは母が勧める結婚より絵本作家として生きることを切望していた。新人編集者ノーマンの助けで、絵本を出版し、大成功を収めるビアトリクス。いつしかノーマンと愛し合うようになるが…。

いつの時代もどんな分野でも、先駆者という存在は偉大だ。上流階級の女性が働くなど論外だった時代に、ビアトリクスは、得意の絵で社会に進出した働く女性“キャリア・ウーマン”。同時に偉大なナチュラリストでもあり、自然保護を実行する行動力と先見性も持っていた。彼女の作品の可愛らしい絵柄とは対照的に、力強くて自立した女性というイメージが沸いてくる。だが、ポターという人物は、アーティストとしての誇り、夢見がちな性格、意外と長けた理財の才などが同居する、複雑な才能の持ち主だったようだ。世界一有名な青い上着を着たウサギ「ピーターラビット」は、そんな女性から生まれた魅力あふれる芸術品である。

この映画は良くも悪くも静かで控えめだ。ビアトリクスとノーマンとのビジネス上での二人三脚は、やがて恋へと発展するが、愛する人の病死によって、幸せは突然手からこぼれ落ちる。昨今の純愛メロドラマならどれほどでも劇的な演出をほどこせるこの悲劇を、さらりと描くのが印象的だ。人間の死も、大自然の大切な一部なのだと言い聞かせるように、喧騒のロンドンから一人田舎に移り住み、悲しみを癒すポター。傷ついた心を抱えながら、愛する自然の中で静かに暮らすたたずまいが、どこか素朴な印象のゼルウィガーにとても似合っていて、好感が持てる。一方、控えめな演出に物足りなさを感じるのは、ポターの持つ精神性の基礎となる部分だ。彼女は、私生活でも仕事の上でも、決して妥協しない。それはポターが、自然保護と歴史的建造物保全のナショナル・トラスト運動の基盤を作ったことにも現われるが、この意思の強さがどこから来たのかが分かりにくい。おそらくは理解のある父親、おそらくは湖水地方への特別な愛着。予想はできるが、彼女の傑出した芯の強さの源をより深く描けば、現代に生きる私たちは、ポターという女性にもっと近づけただろう。

目まぐるしく変化する時代のむなしさと、現実にあふれる悲しみを、ポターは本能的に知っていた。だからこそ、才能ある原作者の特権で、自作の中の世界に遊ぶ喜びを満喫していたのではなかろうか。映画は、ポターのそんな感情を、現代ならではのCG技術で絶妙に表現している。絵本の動物たちを生き生きと動かして、ゼルウィガーと“共演”させたのだ。ウサギ、ネコ、ガチョウ、キツネ。ポターの本の世界そのままに動き回るおなじみのキャラクターたちがほほえましい。動物たちとのデジタル共演の時間は短いが、この演出が映画を格段に魅力的にしている。何よりも、孤独な性格だったと伝えられることが多いビアトリクス・ポターを、ユーモラスで愛すべき女性としてイメージさせてくれたのが嬉しかった。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)キャリアウーマン度:★★★★☆

□2006年 アメリカ・イギリス合作映画 原題「MISS POTTER」
□監督:クリス・ヌーナン
□出演:レニー・ゼルウィガー、ユアン・マクレガー、エミリー・ワトソン、他

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