ミルコのひかり
◆プチレビュー◆
盲目の少年が、音で新しい未来を切り開く姿に感動。トスカーナの光あふれる美しい風景が心に染みる。75点】

1971年のイタリア・トスカーナ。映画好きの少年ミルコは事故で視力を失う。親元を離れジェノバの盲学校に入ったミルコは心を閉ざしてしまうが、古ぼけたテープレコーダーとの出会いが彼を音の世界へと導いていく…。

イタリア映画というのは、どんなに深刻な状況でもユーモアや温かさを忘れないという、得がたい伝統がある。盲目の少年ミルコの果敢な物語もそんな1本だ。現在、映画界で、音響デザイナーとして活躍し、秀作「輝ける青春」などを手掛けたミルコ・メンカッチの少年時代を描いたこの作品は、世界中が古い体制と権力からの解放を渇望する1970年代の空気と混ざり合い、自由への闘いという色合いも帯びている。

ミルコが入った盲学校は、生徒が夢を見ることを、かえってつらくなるからと決して許さず、生徒には決められた職業に就くことを強いていた。ミルコは、閉ざされた世界に生きるしかなかった視覚障害者の未来を、天性の才能で切り開くことに成功する。学校が保護者に見せる退屈な宗教劇の代わりに、仲間たちと音の童話劇を作ろうというのだ。様々な音を収集するその創作過程が、クリエイティブで素晴らしい。ミルコと仲がいい少女フランチェスカが作ったおとぎ話を劇にしようと、身近な材料を使って、雨音や風のざわめき、枯葉を踏む音などを作り出していく。剣で勇猛に戦う様子は、台所のお玉やフライ返しの金属音、火を吹くドラゴンは、近くの鉄工所の溶鉱炉から音を拾った。後にサウンド・デザイナーになるくらいだから、彼の音感やセンスは、並みはずれた才能だったに違いないが、映画はあえてミルコを特別扱いしない。このことが、誰もが可能性を持つというメッセージへとつながって秀逸だ。窮屈な盲学校で希望を無くしていた少年たちは、誰もが皆、ミルコの音集めに楽しそうに協力し、劇を作っていく。子供たちの夢あふれる世界を、大人のものさしで計り、未来を決め付けることなど、決してあってはならないのだ。

映画は実際に、目が見える少年とそうでない少年をほぼ半分ずつキャスティングし、互いにコラボレートさせたという。遊びの中からさまざまなものを生み出す子供たちの感性は、そのまま物語の豊かさになった。物事は目だけで見るのではない。澄んだ心はあらゆるものを映し出してくれる。それを象徴するのが、ミルコと仲間たちが寄宿舎をこっそり抜け出して映画館に行く場面である。たとえ目で映画を見ることができなくても、少年たちは体全体で作品を楽しんでいた。ストーリーをうっすらと覚えていたミルコの愉快な解説に、ドキドキし、大笑いし、スリルを味わう子供たち。彼らの顔は、暗闇の中でスクリーンの光に照らされて、最上級に輝いていた。いったいどれほどの人が映画館でこんな笑顔を見せるだろうか。職業柄、毎日、当たり前のように映画を見ている私だが、無心に楽しむ気持ちをいつのまにか忘れていたように思う。この映画と主人公ミルコに大切なことを教えてもらった。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)珠玉度:★★★★☆

□2005年 イタリア映画 原題「ROSSO COME IL CIELO/Red Like the Sky」
□監督:クリスティアーノ・ボルトーネ
□出演:ルカ・カプリオッティ、シモーネ・グッリー、マルコ・コッチ、他

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