2007年10月06日

映画レビュー「パンズ・ラビリンス」

パンズ・ラビリンス 通常版
◆プチレビュー◆
現実と妄想が美しくも残酷に交錯する。どぎつくて甘美なビジュアルで描くダーク・ファンタジーの傑作。85点】

1944年のスペイン。内戦で父を亡くしたオフェリアは、冷酷な義父のビダル大尉から逃れるため、屋敷の近くの謎の迷宮に足を踏み入れる。そこで出会った牧神パンはオフェリアに、あなたは本当は魔法の国の王女の生まれ変わりだと告げるのだが…。

12歳の少女が試練を乗り越えて成長するこの物語は、ビルドゥングス・ロマンの系譜に連なるものだ。だが本作は、明るい要素とは無縁。輝く未来、同年代の仲間、可愛い動物たちなど、一切登場しない異色のファンタジーだ。ダークな映像で語られるのは、人間の醜さと強さの本質である。奇怪な姿の牧神パンは、オフェリアに3つの恐ろしい試練をクリアすれば、本当の両親の待つ幸せな魔法の国に帰ることができると言う。この提案に、本好きで夢見がちなオフェリアは、怖さと同時に嬉しさを感じてしまう。なぜなら、現実はあまりにつらいことばかりだから。物語の世界に逃避しがちな彼女は、ことあるごとに母親から「人生はおとぎ話じゃない」と叱られるが、オフェリアの空想世界は不気味な魔物がうごめく迷宮だった。ファシストの義父がいる現実に負けず劣らず恐ろしい世界なのである。映画には血生臭い残酷描写も登場し、時には目を背けたくなることも。この逃げ場のない恐怖の二重構造の構成が巧みで、少女のピュアな心を浮き彫りにさせる。現実と空想の世界はなぜか地続きになっていて、チョークで壁に描いた扉から異世界に行くなど、つなぎのセンスが抜群にいい。

この映画を堪能するためには、ヒロインの持つ特権性を理解しなければならない。オフェリアは大人への入り口に立つ無垢な少女だ。無謀さと好奇心がごちゃまぜになって、粘着質の巨大ガエルの唾液にまみれ、手のひらに目がある怪物に近づいていく。ウネウネと気味悪く動く植物の根に、優しく話しかけたりもする。おぞましいものに触れながらも、自分はそんな汚れた存在になどなりはしないと信じるのが少女特有の潔癖さ。そしてこれが彼女の冒険の原動力なのだ。夢見るのは優しい両親に愛される、光に満ちた世界。グロテスクな迷宮で、勇気をもって試練に立ち向かい、懸命に幸福をつかもうとするオフェリアがけなげだ。ヒロインを演じる新人のイバナ・バケロは、どこかシャルロット・ゲンズブールに似た顔立ちで、繊細な表情とけれん味のない演技が魅力的である。

イマジネーションあふれる独特の映像が話題だが、現実と空想がリンクするエモーショナルな物語にこそ魅了される。ゲリラ側の人間が敵にとどめをささなかったり、大尉が軍人としてスキがあることなど矛盾点もあるが、独裁政権末期の山間部のゲリラ戦など、理詰めでは理解できない矛盾だらけの世界だったに違いない。義父の魔の手を逃れ、生まれたばかりの弟を抱いて逃げるオフェリアの運命は?終盤の展開はサスペンスフルで目が離せない。そして、唐突にやってくる悲痛な運命。痛ましさに胸が張り裂けそうになるが、少女がたどりついたその場所は、さらなる高みへ昇華した金色の理想郷だったと解釈したい。オフェリアの存在こそ、人類の希望ではなかろうか。この映画に、キリスト教的教義を見るもよし。少女の成長物語として見るもよし。はたまたレジスタンス映画として鑑賞するのもいいだろう。いずれにしても、ハリウッド産のファンタジーとは全く違うテイストで、こってりと濃厚な映像世界はまさにラテン系。映画ファンなら絶対に見逃してはいけない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)残酷童話度:★★★★★

□2006年 メキシコ・スペイン・アメリカ映画 原題「EL LABERINTO DEL FAUNO/PAN'S LABYRINTH」
□監督:ギレルモ・デル・トロ
□出演:イバナ・バケロ、ダグ・ジョーンズ、セルジ・ロペス、他

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37. パンズ・ラビリンス■現実世界と物語世界の残酷な関係  [ 映画と出会う・世界が変わる ]   2008年01月10日 09:40
この映画には大変にひきつけられた。周辺の方々も含めて、この映画の素晴らしさとすごさを伝えたいのであるが、どのような言葉でそれが出来るのか、心乱れている。スペイン戦争について、スペインの歴史、そこに住む人々の生き方、宗教、そしてギリシア神話についてもっと...
36. パンズ・ラビリンス■悪意に満ちたダーク・ファンタジー  [ 映画と出会う・世界が変わる ]   2008年01月08日 00:15
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【原題: EL LABERINTO DEL FAUNO/PAN'S LABYRINTH 】 監督・製作・脚本:ギレルモ・デル・トロ     製作年度:2006年  日本公開:2007年10月6日  上殮.
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32. 映画『パンズ・ラビリンス』  [ 紫式子日記 ]   2007年12月04日 12:33
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31. 『パンズ・ラビリンス』この映画を見て!  [ オン・ザ・ブリッジ ]   2007年12月02日 23:32
第189回『パンズ・ラビリンス』  今回紹介する作品は今年公開された映画の中で私が一番お薦めの映画『パンズ・ラビリンス』です。 本作品は1944年のスペイン内戦下を舞台に過酷な現実を生き抜くために架空の世界に身を置く少女の姿をシビアかつファンタジックに描いていき...
30. パンズ・ラビリンス (El Laberinto del fauno)  [ Subterranean サブタレイニアン ]   2007年11月17日 01:30
監督 ギレルモ・デル・トロ 主演 イバナ・バケロ 2006年 メキシコ/スペイン/アメリカ映画 119分 ファンタジー 採点★★★★ もうこの位の歳にもなると、ほとんど見なくなった悪夢。稀に見たとしても途中で「あぁ、夢を見ているんだな」と気付いてしまい、もう興醒め甚だし...
29. ★「パンズ・ラビリンス」  [ ひらりん的映画ブログ ]   2007年11月04日 03:06
今週の週末レイトショウは、オスカー3部門受賞の話題作。 といっても、撮影賞・美術賞・メイクアップ賞ですが。 ともかく、予告編見る限りは、ダーークなファンタジーな感じがプンプン。
28. 真・映画日記『パンズ・ラビリンス』  [            ]   2007年10月30日 11:36
10月10日(水)◆589日目◆ 終業後に有楽町のシネカノンで『パンズ・ラビリンス』を見た。 この日はシネカノンの水曜割引(1000円)のためか、場内は満席。 この映画はひとことで「ファンタジー映画」とは言いがたい。 「過酷な現実」と「神話・幻想」を融合した「...
27. 映画「パンズ・ラビリンス」  [ 茸茶の想い ∞ ??祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり?? ]   2007年10月28日 14:19
原題:Pan's Labyrinth この映画での"PG-12"の意味は、成人保護者同伴で小学生を映画館に連れて行って、是非観せてあげてくださいという意味に違いない・・教育指導的お伽噺・・ オフェリア(イバナ・バケロ)は、身重の母カルメン(アリアドナ・ヒル)...
26. パンズ・ラビリンス  [ 空想俳人日記 ]   2007年10月27日 14:40
尾てい骨 頭蓋骨から 心臓へ   なんだか久しぶりです、ナメクジに尾てい骨をむじむじ齧られるような感触の映画を観たのは。しかも、ギリアム監督の「未来世紀ブラジル」のときのような、頭蓋骨の内側から除夜の鐘をくわんくわん鳴らされた驚愕も味わいました。ちょ...
25. パンズ・ラビリンス  [ パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ ]   2007年10月18日 22:22
4 無垢で孤独な魂は、地獄に天国を見出そうとして、闇の悪魔を光の天使へと反転する。哀しい瞳をした少女の前に現れたのはパン(牧神)。いたずら好きの彼は戸惑う少女にこう囁いた。「あなたは、長い間捜し続けていた魔法の王国のプリンセスに違いない。 それを確かめるた...
24. パンズ・ラビリンス 観てきました。  [ よしなしごと ]   2007年10月18日 01:27
 風邪を引いてしまい、風邪薬を飲みながらパンズ・ラビリンスを観てきました。風邪と薬の影響もあってだいぶ眠かったんですが。
23. 【劇場映画】 パンズ・ラビリンス  [ ナマケモノの穴 ]   2007年10月17日 21:46
≪ストーリー≫ 1944年、内戦終決後のスペイン。父を亡くした少女オフェリアは、身重の母と共にゲリラが潜む山奥で暮らし始める。そこは母が再婚したフランス軍のビダル大尉の駐屯地だった。体調の思わしくない母を労りながらも、冷酷な義父にどうしても馴染めないでいた彼...
22. パンズ・ラビリンス  [ ★Shaberiba ★ ]   2007年10月17日 20:44
ありのままの現実は,生きるにはつらすぎた。 だから少女は幻想の国で永遠の幸せを探した・・
21. 『パンズラビリンス』 ★★★★・  [ じゃがバタ?? 映画メモ ]   2007年10月14日 15:52
重い題材をファンタジーで包んで出してくれたのか? それにしても、しばらく座席から立てない映画でやんした、重力強すぎ ダークファンガジーよりもダークな現実の中に生きているオフェリア そりゃ、物語でも信じたくなるわさ R12な部分では、もちろん自主規制  ...
20. パンズ・ラビリンス  [ Akira's VOICE ]   2007年10月14日 15:46
哀しみと希望が交差するダークファンタジー。
19. 映画:パンズ・ラビリンス  [ 駒吉の日記 ]   2007年10月14日 09:58
パンズ・ラビリンス(有楽町シネカノン一丁目) 「次の満月が訪れる前に試練に耐えて王国に戻るのです」 大人たちは地上の自由を求め闘い、少女は地底の王国を夢をみた・・・ 母の再婚で継父とうまくいかない少女のダーク・ファンタジー。というくらいの情報で臨みま...
18. パンズ・ラビリンス  [ ☆彡映画鑑賞日記☆彡 ]   2007年10月13日 22:54
 『だから少女は幻想の国で、 永遠の幸せを探した。』  コチラの「パンズ・ラビリンス」は、フランコ独裁政権下のスペインが舞台のPG-12指定のダーク・ファンタジーで、10/6公開となっていたのですが、観て来ちゃいましたぁ〜♪  既にご覧になられた方の間では、かな...
17. 映画「パンズ・ラビリンス」(2006、墨・西・米)  [ 富久亭日乗 ]   2007年10月12日 22:24
 ★★★★☆  スペインの内戦下、 14歳の少女が、妖精に導かれ3つの試練に挑戦する物語。 ただし予定調和的な子供向けファンタジーではない (拷問のシーンなど残酷な場面があり、「PG-12」指定だ)。  原題はEl laberinto del fauno、英題はPan's Labyrinth。 「パ...
16. パンズ・ラビリンス  [ シネクリシェ ]   2007年10月12日 06:09
 きわめて前評判の高い作品で、日本で紹介されることが未だにめずらしいスペイン映画ということもあって、かなりの期待をしていました。  しかし、自分の好みかといわれれば首をかしげざるを得ませんでした。  
15. 「パンズ・ラビリンス」観てきました♪  [ りんたろうの☆きときと日記☆ ]   2007年10月11日 19:52
☆「パンズ・ラビリンス」 監督:ギレルモ・デル・トロ 出演:イバナ・バケロ、セルジ・ロペス、マリベル・ベルドゥ、ダグ・ジョーンズ、アリアドナ・ヒル、アレックス・アングロ 1944年の激しい内戦下のスペイン。 この内戦で優しかった父を亡くしたオフェリアは、...
14. パンズ・ラビリンス−(映画:2007年115本目)−  [ デコ親父はいつも減量中 ]   2007年10月10日 22:22
監督:ギレルモ・デル・トロ 出演:イバナ・バケロ、セルジ・ロペス、マリベル・ベルドゥ、ダグ・ジョーンズ、アリアドナ・ヒル、アレックス・アングロ 評価:89点 公式サイト (ネタバレあります) 第79回アカデミー賞ではアカデミー撮影賞、アカデミー美術賞....
13. 「パンズ・ラビリンス」:表参道バス停付近の会話  [ 【映画がはねたら、都バスに乗って】 ]   2007年10月10日 22:16
{/hiyo_en2/}表参道とか原宿とかって、個性的なお店がいっぱいあるんだけど、どこに何があるのかよくわからないのよね。 {/kaeru_en4/}まったく、迷宮みたいな町だもんな、このあたりは。東京人でも、なんか、おのぼりさんになった気分になるぜ。 {/hiyo_en2/}迷宮、すなわ...
12. Pan's Labyrinth  [ PiPiPiX.tXt ]   2007年10月10日 15:05
強烈な対比が紡ぎだす、ファンタジーとは何かという究極の問いかけ パンズ・ラビリンス/Pan's Labyrinth/El laberinto del fauno(2006)監督:Guillermo del Toro ギレルモ・デル・トロ出演:Ivana Baquero イヴァナ・バケ??0I
11. mini review 07076「パンズ・ラビリンス」★★★★★★★★☆☆  [ サーカスな日々 ]   2007年10月10日 02:34
解説: 1944年のスペイン内戦下を舞台に現実と迷宮の狭間で3つの試練を乗り越える少女の成長を描くダーク・ファンタジー。『デビルズ・バックボーン』のギレルモ・デル・トロ監督がメガホンをとり、ファシズムという厳しい現実から逃れるため、架空の世界に入り込む少女を...
10. パンズ・ラビリンス /EL LABERINTO DEL FAUNO/PAN'S LABYRINTH  [ 我想一個人映画美的女人blog ]   2007年10月09日 10:30
                                       {/hearts_pink/}人気blogランキング{/hearts_pink/} ずっと気になってた作品だったので、初日に観てきました...
9. 「パンズ・ラビリンス」  [ 或る日の出来事 ]   2007年10月08日 12:01
これから観ようと思っている方へ忠告。 少女が主役の可愛いファンタジーと思ってはいけません。圧倒的に残酷な戦争悪の現実を直視した、重い作品。 今年のアカデミー賞で、撮影・美術・メイクアップの各賞を受賞したことで р
8. パンズ・ラビリンス  [ 江戸っ子風情♪の蹴球二日制に映画道楽 ]   2007年10月08日 09:19
 メキシコ&スペイン&アメリカ  ファンタジー&ドラマ&ホラー  監督:ギレルモ・デル・トロ  出演:イバナ・バケロ      セルジ・ロペス      マリベル・ベルドゥ      ダグ・ジョーンズ 【物語】 1944年のスペイン。内戦終結後もフランコ政権....
7. パンズ・ラビリンス  称号:良作  [ 映画細胞??CinemaCell ]   2007年10月08日 00:50
1944年、スペイン。少女オフェリアは内戦で父を亡くし、母の再婚相手である大尉
6. パンズ・ラビリンス  [ ぁの、アレ!床屋のぐるぐる回ってるヤツ! ]   2007年10月07日 08:55
本年度ベスト1映画に決定!
5. パンズラビリンスの感動 ダークファンタジー映画 アカデミー賞3部門受賞作品  [ 映画dvd感想 ふらっぺの映画dvdの感想記 ]   2007年10月07日 04:47
5 パンズ・ラビリンス PAN'S LABYRINTH 公式サイト こんばんは、ふらっぺです。 アカデミー賞で3部門受賞をはじめ、 ゴヤ賞7部門など、映画の様々な賞を次々と受賞し、 世界中の映画界で話題になった ダークファンタジー映画 パンズ・ラ....
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3. 『パンズ・ラビリンス』  [ Sweet* Days** ]   2007年10月06日 20:18
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この記事へのコメント
1. Posted by kimion20002000   2007年10月16日 23:11
TBありがとう。
そう、シャルロットも少女時代は、可愛いというよりは、お茶目さと懸命さのある、独特な魅力をかもし出す少女でしたね。
2. Posted by まちこ   2007年10月21日 00:12
シャルロット・ゲンズブールと、イバナ・バケロ。目がちょっと似ています。
シャルロットは今はずいぶんしっとりとしたイイ女になりましたから、イバナちゃんにもその素質があるかも?
3. Posted by 紫式子   2007年12月05日 23:30
TBお返しいただきありがとうございました。

いろんな側面があって、
いろんな見方ができる映画でしたね。
Blogを見ても十人十色の解釈があり、
観終わってからも刺激になっています。
4. Posted by まちこ   2007年12月06日 23:13
紫式子さん、コメントをありがとうございます。

いろんな解釈や見方ができる。ウン、確かに。
全員が褒めたり、全員がけなしたりする映画なんて、ちょっとつまんないしね(笑)。

私は、見終わった後に評価が割れる映画には常に注目しているんですよ。
そういう作品が映画界を牽引すると確信しています。
「パンズ・ラビリンス」は、まさにそんな1本でした。

5. Posted by ロックンロール   2009年04月28日 01:50
3 残酷な描写が多く不快になった映画。他の批評家の小難しい美学を聞いて初めて価値がわかる作品。普通に見ていて気味の悪いシーンばかりで、これがいい映画だとは思えない。こんなものが好きな人ばかりだというのは、世の中も相当歪んでいると感じてしまう。見るに耐えない。だが確かに価値はあるのだ。現実が嫌になる鬱映画。
6. Posted by まちこ   2009年04月28日 23:06
ロックンロールさん、コメントをありがとうございます。
「パンズ・ラビリンス」をお楽しみ(?)いただいたようで何よりです。

“鬱映画”でしたか(苦笑)。確かに楽しい作品ではありませんね。
ファンタジーというのは実は非常に残酷な世界なので、そういう意味では、この映画は、リアルなファンタジー(矛盾した表現ですが)と言えるでしょう。

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