スターダスト スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]スターダスト スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
一見たわいないファンタジー。でも裏側には異才の英国人原作者の皮肉めいた視線が。ベテランの脇役が豪華。 【65点】

 イングランドのはずれにあるウォール村。青年トリスタンは村一番の美女に愛の証として流れ星を取ってくると約束する。落ちた場所に行くと、流れ星は美女イヴェインに姿を変えていた。同じ頃、村の外壁の向こうの魔法の国ストームホールドでは、不老を求める邪悪な魔女や、王位継承を狙う王子たちも流れ星を狙っていて…。

 物語の中心は、流れ星争奪戦だ。魔法のロウソクやお守りの待雪草の花、空飛ぶ海賊船まで登場し、ワクワクするような冒険が繰り広げられる。こう説明すると、一見まっとうなおとぎ話だが、裏側には毒の気配が。原作者ニール・ゲイマンは、本来、ダーク・ファンタジーを得意とするグラフィック・ノベル作家だ。異才作家らしく、フツーのファンタジー映画のフリをして、英国らしい皮肉が巧みに仕込んである。映画では、物語の核となる流れ星イヴェインを、いまひとつ旬を感じない女優クレア・デインズに割り振るしかなかったところがツラいが、ベテラン俳優のお遊びを見る楽しみを用意してくれた。美人女優ミシェル・ファイファーは、醜い魔女を楽しそうに演じているし、海賊船の船長デ・ニーロは「まさか!」の格好で映画ファンを驚かせる。おまけにニタニタとよく笑うのだ。まぁ、この役をシリアスに演じられても困るのだが。主役より名優たちの自虐演技に目が行くなんて、やっぱりフツーじゃない。

 さて肝心の主人公トリスタンだが、さっぱり魅力がないからこれまたヘンである。流れ星のありがた味にも気付かず、村のわがまま美女の気を引くことばかり考えているおバカさんなのだ。もっとも最初がこれなので、劇中での成長度は極めて高い。一方、流れ星イヴェインは、頼りないトリスタンにつきあって、紐を付けられた子犬のように冒険の旅に同行する。見る目がないのか、面倒見がいいのか。理由は簡単、恋してしまったのだ。何しろ彼は最初に出会った“人間”だ。比較検討しろと言うのも無理である。そんな世間知らずの流れ星の胸には、地上に落ちた時にみつけたルビーのネックレスが。この宝石が物語を大きく揺さぶることになる。ともあれ、流れ星が恋をしたら、世界は激変する運命だ。イヴェインの必殺技は“星”らしく輝くこと。果たして二人は、邪悪な魔女や強欲な王子の追跡をかわすことができるのか?

 最もシニカルなのは、物語の随所に王室問題をからませているところだ。醜い相続争いや、亡霊になった王子たちのブラックな会話が、英国王室への皮肉に見えて仕方がない。何といっても、瀕死の王が、争いの火種を付けるようにヒョイといたずらを仕掛けて死んでいく導入部がサエている。その王を名優ピーター・オトゥールに演じさせ、格調を保つあたりも気が利いている。冒険の果てのクライマックスは、ファンタジーのお約束である強引な大団円だが、王家の血筋は意外なところからつながっていく。正統な血などもはや存在せず、王家の面目は、突然空から落ちてくる流れ星のような混入異物の活躍にすがるしかないのだ。子供向けのファンタジーとあなどるなかれ。さりげない毒気と共に深読みすれば、英国の今が鏡のように映り込んでいる。興味があったらちょっと覗いてみよう。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ハッピーエンド度:★★★★☆

□2007年 アメリカ映画 原題「STARDUST」
□監督:マシュー・ヴォーン
□出演:クレア・デインズ、ミシェル・ファイファー、ロバート・デ・ニーロ、他

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