2007年11月09日
無法松の一生
無法松の一生 [DVD]
大人の純情と映画愛をしみじみと綴った映画「オリヲン座からの招待状」の劇中で、ついに閉めることになった小さな映画館オリヲン座で、最後に上映されるのが、1943年・バンツマ版の名作「無法松の一生」だ。
福岡県小倉を舞台に、荒くれ者の人力車夫・松五郎(通称無法松)と、陸軍大尉の未亡人とその息子との触れ合い、そして未亡人への秘めた恋心がみずみずしく描かれる。未亡人を慕う松五郎の男の純情が泣かせる物語で、ここに「オリヲン座…」のストーリーが重なって見える。
祭りの様子や無法松の回想シーンなどを時に幻想的にとらえた撮影は、当時の技術では画期的で素晴らしいものだ。特に、暴れ太鼓を打つ名シーンが美しく、心に残る。検閲で貴重な名場面がカットされたのが惜しまれるが、それでもこの作品の輝きは何ら衰えるものではない(注:復刻版もあり)。
この映画は計4度映画化されたが、同じ稲垣浩が監督した最初の2作品、43年の阪東妻三郎版と、58年の三船敏郎版(ベネチア映画祭金獅子賞・43年版に負けず秀作に仕上がったリメイク作)が名高い。
ちなみに、浅田次郎の短編小説の原作(「鉄道員(ぽっぽや)」に収録)では、オリヲン座を守り続けた若い2人の純愛ではなく、昔、オリヲン座を遊び場所として育ち、今は夫婦になった幼馴染の男女が、久しぶりにオリヲン座を訪れることで、冷めた関係を和解へと導く物語になっている。原作の中では、最後に上映される映画は「無法松の一生」ではなく、川島雄三監督、フランキー堺主演の「幕末太陽傳」(1957年)で、こちらも名作だ。
(1943年/稲垣浩監督/阪東妻三郎、園井恵子、沢村アキヲ(現・長門裕之)他)![]()
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