素晴らしき哉、人生!
素晴らしき哉、人生!
クリスマスに見る映画の定番といえば、やはりこの映画で決まりだ。ハート・ウォーミングなフランク・キャプラの演出は、いつの時代も人生に希望を与える。
善良な主人公ジョージは大金を失って絶望し、自殺しようとする。だが、そこに天使が現れ、「もし君がいなかったら、世界はこうなったんだよ」と言いながら、ジョージを連れて“彼が存在しない世界”を見せる。思い通りの人生ではなかったと悔やんでいた自分の存在が、実は人々を幸福にしてきたと分かったジョージは思わず「元の世界に戻してくれ!」と叫ぶが…。
古い作品なので最初は少しテンポが遅いと感じるだろう。白黒の画面は最新のデジタル映像に比べればいかにも地味だ。だが、それでもこの映画のストーリーの素晴らしさが損なわれることはないと私は確信している。アメリカでは、クリスマスの時期には必ずどこかのTV局で放映されているほど有名な映画で、「ホーム・アローン」や「グレムリン」でも劇中にさりげなく映っている。
味わい深いのは、主人公ジョージの自殺を止める天使の演出。むさくるしい老人の姿の天使は、実はまだ羽根さえもらえない二級天使という設定が楽しい。ジョージに希望を取り戻させ、再び生きる喜びを与えることができれば、彼は「神さま」から昇格(栄転と呼ぶべきか)の恩恵にあずかるというワケだ。そんなオッサン天使の頑張りがユーモラスで、キャプラの笑いのセンスを感じる。
フランク・キャプラ監督のフィルモグラフィーを見ると、楽観的なストーリーの作品が多い。それゆえ、社会派好みの映画評論家からやや侮蔑的に語られた時期もあった。だが、この名匠の映画の根底には、社会を鋭く分析した上でのエピュキリズムと、映画で希望を伝えたいという素朴な優しさが常にある。それは映画ファンが心の底で求めている温かさだ。だから、彼の作品は、オールド・ファッションでも決して“古く”はならない。
自分の命は自分だけのものではない。この世に不必要な人などいない。「素晴らしき哉、人生!」は、そんなことを教えてくれるヒューマン・ドラマの名作にして、世界で一番愛されているクリスマス映画なのだ。
出演は、ジェームズ・スチュアート、ドナ・リード、ライオネル・バリモア、他。
(1946年/フランク・キャプラ監督/原題「IT'S A WONDERFUL LIFE」)
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