テラビシアにかける橋 [DVD]テラビシアにかける橋 [DVD]
◆プチレビュー◆
ファンタジーというより子供の心の豊かさを描いた作品。原作は児童文学だが、映画は大人向けだ。 【65点】

 いじめられっ子の少年ジェスは、風変わりな転校生レスリーと仲良しに。二人は森の中に“テラビシア”という空想の国を創り上げる。この秘密の国で、彼らは王と女王として国を統治し自由だった。だがそんな二人の楽しい日々を突然の悲劇が襲う…。

 正直に言うと、見る前は全く期待していなかった。例によって子供が主役のファンタジーで、動物やクリーチャーがいっぱい登場し、大冒険の末のハッピーエンドだろうと軽く考えていたのだ。だがこの映画はいい意味で期待を裏切ってくれる。これはファンタジーではない。どんな子供も必ず持っている“想像力”で心を豊かにし、人生の困難に立ち向かう勇気を培う方法を教えてくれる物語なのだ。

 主人公ジェスはわずか11歳にして負け犬根性がしみついたヘタレ少年だ。彼の家は子沢山で女系家族、経済的にも貧しい。生活に追われる両親は、絵とかけっこが得意なジェスを褒めてやる心の余裕などないのだ。家では姉妹たちの中でバカにされ、学校でもいじめられているジェスが、レスリーと気が合ったのは、二人とも現実世界に上手く溶け込めないという共通項があったからだろう。ただ、同じはみだし者でも、二人には大きな違いがある。それはいじめに遭う場面でよく分かる。ジェスは最初からあきらめモードだが、レスリーはいじめさえ楽しもうとするのだ。個性的な芸術家の両親から育てられた彼女には、物事すべてをプラスにとらえる特別な才能があった。そんな彼女の提案で作り上げた想像の王国テラビシアは、単なる逃避の場ではないというところがポイントだ。ここでは彼らは生きるために必要なガッツを学んでいく。

 言うまでもなく、いじめは、世界的に深刻な問題だ。だが、法規制や大人の介在で解決しようとする日本と違い、アメリカには、自分のことは自分で解決すべきという精神が根底にあるのではなかろうか。映画の中でも、二人の両親はもちろん、ジェスの美術の才能を見抜く優しい先生でさえ、子供の問題には口出ししない。だからこそテラビシアは重要なレッスンの場となるのだ。魔法や不思議な生き物が助けてくれるのではなく、自分で解決法をさぐり現実世界で実行する設定が、物語を地に足がついたものにした。それは、終盤に起こる悲劇のあとにこそ効力を発揮する。

 映画の軸となるレスリーを演じたアナソフィア・ロブのはつらつとした表情がとてもいい。彼女は「チャーリーとチョコレート工場」で生意気な少女を演じていたが、本作ではちょっぴり大人っぽくなっていて、どこかキーラ・ナイトレイを思わせる。将来有望な小さな名女優に注目しておこう。監督は、ハンガリー出身のガボア・クスポ。本職はアニメーターというだけあって、テラビシアの造形が生き生きと魅力的に撮れている。美しい谷や緑にあふれた森は、重層的な深みを持ち、子供たちの可能性の広がりの象徴のように見える。だが、一番素晴らしいのは、終盤に登場するテラビシアの入り口にかけられた本物の橋だ。そこを渡れば幸せになるのではなく、それを作ったものは少しだけ大人になり強くなる。小さな妹の手をしっかりと握るジェスの顔が輝いているのがその証拠だ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ほろ苦度:★★★★☆

□2007年 アメリカ映画 原題「Bridge to Terabithia」
□監督:ガボア・クスポ
□出演:ジョシュ・ハッチャーソン、アナソフィア・ロブ、ロバート・パトリック、他

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