2008年02月09日

映画レビュー「潜水服は蝶の夢を見る」

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◆プチレビュー◆
20万回のまばたきで自伝をつづった伊達男の物語は感動の実話。圧倒的に美しい映像に酔いしれる。 【90点】

 3人の子の父親で一流モード誌ELLEの編集長ジャン=ドーは、突然の脳梗塞で左のまぶた以外の自由が効かなくなる。彼の意識が鮮明なことを知った言語療法士アンリエットは、まばたきによって意思を伝える方法でジャン=ドーを導いていくが…。

 まるで詩のようなタイトルに心を奪われる。潜水服は体の自由がきかない様子を、蝶は体は動かなくても自由に舞う想像力を意味する。シリアスな状況にも係わらず、不思議なユーモアを漂わせるこの映画の主人公は、ジャン=ドーこと、ジャン=ドミニク・ボビー。原作は、彼自身が20万回のまばたきでつづった驚異の自伝小説だ。映画は、まぶしいほどの希望にあふれている。

 言語療法士が仏語で使用頻度の高い順にアルファベットを読み上げ、単語をつづるという方法は、気が遠くなりそうに根気がいる作業だ。「はい」は1回、「いいえ」は2回のまばたき。極めて原始的ながら確実なこの意思伝達法が、周囲の人々を巻き込んでのワークショップになったことが興味深い。目的は会話と自伝の執筆だが、この体験を共有した人々は、生きる意味を突きつけられる。ジャン=ドーとのコミュニケーションは自分の不確かな運命をみつめることなのだ。その問いかけは妻も愛人も子供たちにも同様に作用する。病気になる前のジャン=ドーは、仕事も遊びも超一流のリッチなチョイワルおやじだ。完璧な成功者で、ちょっと鼻持ちならないヤツに思える。だが彼が、真の“一流”を見せつけたのは、体の自由と言葉を奪われてから。左目しか動かない男が、強靭な精神力と豊かな想像力で、全身全霊で生きてみせる。この姿を見て感動しない人間などいない。

 主人公の生き様は大きな驚きだが、これを映像化するセンスと才能にも同じくらい驚く。本職が画家のジュリアン・シュナーベルの美意識は、スピルバーグ作品で知られる名カメラマンのヤヌス・カミンスキーを得て、ますます冴え渡った。カメラは左目を一人称とし、ジャン=ドーの状況を観客に追体験させる。最初は限られた範囲で不自由に、やがてさなぎが蝶になって羽ばたくように自由に。主人公の状況や心情が映像とリンクするひらめきのある演出は、今まで見たこともないほどユニークで、まさにアーティストのものだ。溢れる色彩、フレームから大胆にはみ出す人物、ぼやけた映像と鮮明な映像の絶妙な配分。過去の思い出や引用映像も、美しいが決してセンチメンタルではない。従来の映画文法の制約を受けず展開する、独特のカメラワークが魅力的だ。同時にこれら映像のコラージュは、アートでありながら物語をきちんと伝えることを忘れない。ここにシュナーベルの映画作家としての才能がある。

 ジャン=ドーの病気は、閉じ込め症候群(ロックト・イン・シンドローム)と呼ばれる難病だ。一度は死にたいと願った彼が、「もう自分を憐れむのはやめた」と決め、魂の旅を始めたとき、彼の存在は永遠となった。ラストはたまらなく切ないが、人間の生命力をこんなにも美しく描いた作品を私は他に知らない。極限状態においてなお、人は輝くことができると教えてくれる、宝物のような映画だ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)映像美度:★★★★★

□2007年 仏・米合作映画 原題「LE SCAPHANDRE ET LE PAPILLON」
□監督:ジュリアン・シュナーベル
□出演:マチュー・アマルリック、マリー=ジョゼ・クローズ、マックス・フォン・シドー、他

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20. 潜水服は蝶の夢を見る  [ 小部屋日記 ]   2008年07月23日 22:26
LE SCAPHANDRE ET LE PAPILLON(2007/フランス=アメリカ)【DVD】 監督:ジュリアン・シュナーベル 出演:マチュー・アマルリック/エマニュエル・セニエ/マリー=ジョゼ・クローズ /アンヌ・コンシニー/マックス・フォン・シドー 原作本は世界31カ国で出版されたベス...
19. 潜水服は蝶の夢を見る  [ ネタばれせずにCINEるか ]   2008年07月19日 23:24
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ジャン=ドミニック ボービー原作、 ジュリアン・シュナーベル監督、マチュー・アマルリック、マリー=ジョゼ・クローズ、マックス・フォン・シドー。原作者の実体験に基づいた映画で、本来なら「潜水服」というより「潜水鐘」。英訳はDiving Bellだ。最も原始的な潜水装置で...
13. 潜水服は蝶の夢を見る 2007年仏米  [ Movie heart beat ]   2008年03月03日 22:17
Mhb vol.728 2008年02月28日 19時00分 発行  ジュリアン・シュナーベル監督。マチュー・アマルリック、マリ=ジョゼ・クローズ出演。ファッション誌『ELLE』の編集長のジャンは突然身体に暑さを感じ昏倒してしまう。気付くとある田舎町の軍病院にいた…。  左目以外...
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4 人気ブログランキングの順位は? ぼくは生きている。話せず、身体は動かせないが、 確実に生きている。 ジャン=ドミニク・ボビー ELLE編集長、42歳、子供3人の父親。 ある日倒れ、身体の自由を失った。 そして左目の瞬きだけで語り始める。 蝶のように飛び立....
11. 潜水服は蝶の夢を見る  [ シネマログ  映画レビュー・クチコミ 映画レビュー ]   2008年02月26日 23:36
記憶と想像力が唯一、人間性を保つ■ストーリーフランスのファッション雑誌\"ELLE\"の編集長、ジャン=ドミニク・ボビー。1996年、43歳のときに脳梗塞で倒れ、左目だけが唯一動く状態となった。ロックト・イン・シンドローム(閉じ込め症候群)となったジャンは、自ら命を絶...
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★★★★★byおたむ   涙を誘わない超感動作。こういうのって大好き。   原題☆LE SCAPHANDRE ET LE PAPILLON/THE DIVING BELL AND THE BUTTERFLY 製作☆2007年...
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上映スクリーン数: 5  オープニング土日祝興収: 1089万円うち新宿バルト9
7. 潜水服は蝶の夢を見る  [ ☆彡映画鑑賞日記☆彡 ]   2008年02月17日 19:56
 『ぼくは生きている。 話せず、身体は動かせないが、 確実に生きている。』  コチラの「潜水服は蝶の夢を見る」は、2/9公開となった"20万回の瞬きで自伝を綴った、脅威の実話!圧倒的な映像美で描く、きらめく愛の感動作"なのですが、観て来ちゃいましたぁ〜♪  ア...
6. 『潜水服は蝶の夢を見る』  [ 京の昼寝〜♪ ]   2008年02月16日 10:13
□作品オフィシャルサイト 「潜水服は蝶の夢を見る」□監督 ジュリアン・シュナーベル □原作 ジャン=ドミニック・ボービー □キャスト マチュー・アマルリック、エマニュエル・セニエ、マリ=ジョゼ・クローズ、マックス・フォン・シドー、ジャン・ピエール=カッセル&...
5. 潜水服は蝶の夢を見る  [ アートの片隅で ]   2008年02月12日 12:19
「潜水服は蝶の夢を見る」の試写会に行って来ました。
4. 潜水服は蝶の夢を見る/le scaphandre et le papillon  [ 我想一個人映画美的女人blog ]   2008年02月12日 09:45
原題はle scaphandre et le papillon "ー身体は潜水服を着たように重たくても、僕の想像力と記憶は蝶のように自由に羽ばたくー" 実話です。 {/book/}ジャンドミニクは三人の子の父親であり、雑誌ELLEの編集長として充実した人生を送っていた。 ある日突然、倒れ気がつく...
3. 「潜水服は蝶の夢を見る(Le Scaphandre et le Papillon )」映画感想  [ Wilderlandwandar ]   2008年02月10日 14:12
傑作映画の宝庫、アカデミー外国語映画賞ノミネート作品で、色々
2. 「潜水服は蝶の夢を見る」試写会  [ ノルウェー暮らし・イン・ジャパン ]   2008年02月09日 23:15
フランス映画だ。 これぞフランス映画!といってもいい。 ハリウッド映画のように、お涙頂戴しない。 ハリウッド映画のように、ハッピーエンドにしない。 切なく、そして切ない、ひたすら切ないフランス映画だ。
1. 『潜水服は蝶の夢を見る』  [ Sweet*Days** ]   2008年02月09日 14:33
監督:ジュリアン・シュナベール CAST:マチュー・アマルリック、エマニュエル・セニエ 他 第60回カンヌ映画祭 監督賞他受賞 第65回??.
この記事へのコメント
1. Posted by きなこ   2008年02月09日 10:59
はじめまして。言語聴覚士をしている者です(日本では「言語療法士」ではなく「言語聴覚士」といいます)。
国外のこととはいえ、同業者が出てくるこの映画のことが気になっていました。やっぱり素敵な映画なんですね。
ぜひ見に行きたいと思います!

まだまだマイナーな職業ですが、日本にも1万人以上の言語聴覚士がいます。この映画のよさとともに、言語聴覚士にもほんの少し、光が当たればいいな〜と思っています。
2. Posted by まちこ   2008年02月09日 17:07
きなこさん、はじめまして。コメントをありがとうございます。

日本で言語聴覚士と呼ぶこと、知りませんでした。…というか、私は恥ずかしながら言語療法士という職業を、この映画で初めて知りました。でもこの映画で、必ず注目される職業だと思いますよ。映画では主人公のコミュニケーションを助けますが、それはすなわち彼の命を助けたことと同じ意味を持ちます。時に励まし慰め、時に叱咤しながら、ものすごい根気で仕事をする言語療法士たちには心から敬意を表します。しかも美人なんですよぉ〜!

映画は今日2/9封切で全国順次公開されます。ご覧になったら、プロの言語聴覚士さんの立場から、ぜひ感想を聞かせてくださいませ。映画としても素晴らしい出来栄えなんですよ。私は職業柄、1年間に劇場公開新作映画を約300本、旧作の初見の作品も含めると500本以上の映画を見ますが、この作品は、2008年マイ・ベストテン入り当確です!
3. Posted by きなこ   2008年02月25日 20:17
やっと今日見てきたのですが、
映像が本当に素晴らしくて見入ってしまいました。
ただ、言語聴覚士であるわたしにとって、
ストーリーは「日常そのもの」だったのです。

若くして重い障害を負ってしまうこと、
ごく限られた手段でしかコミュニケーションが取れなくなってしまうこと、
少しずつ回復していくと思っていた矢先に亡くなってしまうこと・・・。
これらは多くの方にとってはすごくドラマチックなのでしょうが、
わたしにとってはごくごく日常的なことなのです。

でも、その「日常」で感銘を受けてくださる方がいらっしゃるということで、
わたしは自分の仕事にもっと誇りを持っていいのではないか?と思いました。
奢らず、でも誇りを持って、患者さんのことを支えていきたいと思います。
4. Posted by まちこ   2008年02月26日 10:05
きなこさん、コメントをありがとうございます。

私、このコメントを読んで思わず目頭が熱くなってしまいました。素晴らしい職業ですよ、言語聴覚士というお仕事は!

でも、きなこさんにとって“日常”という部分、ちょっとショックでした。私は、ジャン・ドーの病状はかなり特殊なことだと思ってました。特に回復する矢先に亡くなるということが、日常的なことだなんて…。

貴重なコメントを本当にありがとうございます。ここは新作映画レビューが中心ですが、旧作も取り扱ってます。ぜひまた遊びに来てください。お待ちしています。
5. Posted by kimion20002000   2008年08月06日 02:19
TBありがとう。
この芸術肌の監督と、職人的な撮影監督との組み合わせは、とてもよかったと思いますね。
6. Posted by まちこ   2008年08月06日 09:03
kimion20002000さん、TBとコメントをありがとうございます。

カメラワーク、今までにない美意識で素晴らしかったですね。
また遊びにきてください。

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